学校も休みの土曜日。俺は名前の部屋へ押しかけていた。いつからかは忘れたが、特に用事がない休日はこうしていつも名前の部屋で時間を潰している。今ではそれが普通になって、俺用の置き菓子をしまう棚がある程だった。
「おい、いつまでやってんでィ」
空になった菓子の袋をぐしゃっと潰し、既に見飽きた光景から視線を外した。
「だ、だって!ああもう決まらないよう」
ばさばさと、明日着ていく服を漁る名前。名前の家に訪れた途端腕を引かれ、訳が分からぬままどうゆう格好がいいかと相談を受けていた。土方くんに会うからと、朝からずっとこの調子だ。
「何着たってブスには変わりねぇよ」
「もう!真剣に悩んでるんだから。スカートがいいかな?でもパンツのが」
「ま、スカートの方が手突っ込みやすいけどな」
「…土方くんはそんな事しない」
「男はみんなそんなモンでィ。覚えとけ」
コイツは土方コノヤローにどんな夢を抱いてやがんだ。俺は棚から新しい菓子を取り出し、それを開ける。
「ううん、スカートかなやっぱり。髪型は…ねぇ総悟、土方くんどんなのが好きか知ってる?」
無意識に考えを巡らせればふと俺の姉上が頭に浮かんだ。更に不機嫌になり、それを振り払うように頭を振る。
「…知るかンなもん」
「えー」
困ったなあと名前が眉を寄せる。しばらく散らばった服を見つめながら、名前はだんだんと頬が緩んでいった。
「…なにニヤニヤニヤしてんだ気色悪ィ」
「、ニヤけてた!?」
「ブッサイクな顔してたぜィ」
「うー」
「…そんなに嬉しいか」
「え?」
「アイツ、と…」
「…総悟?」
訝しげに、名前が首を傾げた。…俺はなにを言ってんだ。紹介した時に、もう諦めてたじゃねェか。コイツの嬉しそうな顔が俺に向けられない事が、こんなにも苛々する。苛々、するんだ。
「…チッ」
「総悟、どうしたの?なにかおかしっ、」
徐に掴んだ細い手首を引いて、項に手を添えて引き寄せた。力に促されるように、いとも簡単に名前の唇を奪う事に成功する。
「、!」
ガタンッ
俺は体を突き飛ばされ、後ろにあった棚に背中を打った。名前は顔を真っ赤にしながら口元を押さえ、信じられないものを見るかのような目を俺に向けている。そんな顔も可愛いと思ってしまう俺はどうかしてるんだろうか。
「何、するの」
「…」
「…総悟、今日おかしい」
「…」
「か、帰って!」
吃りながらも名前が、俺に向かって叫ぶ。泣きそうな顔で。面白くねェ。
「言われなくても、帰らァ」
携帯と財布を持ち、名前の部屋を後にした。後に残るのは後悔だけで。
「ちくしょう」
やっと俺に向けられた目の色は、拒絶。 / 何ニヤニヤしてんだ、気色悪い
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