あれから、名前と土方さんはそこそこよくやっているようだった。廊下で話しているのを何度か見かけたりする。そして今日も放課後、廊下で二人で何やら話しているのを見つけた。咄嗟に柱の影に隠れる。なんで俺がコソコソしなくちゃならねェんだ。
「でね、あの時に…」
「マジか。すげェなそれ」
「でしょ?…、あ、あの、それでね、今度の日曜、」
「あ、俺そろそろ部活行かねェと」
「あっ、そ、だよね、ごめん、行ってらっしゃい!頑張ってね!」
「ああ、またな」
あいつまたチャンス逃してるし。度々、こうゆう場面に遭遇する事があった。あいつが部活に土方を見学に行った時も、タオルを渡そうとして他の女に追いやられていたり。何度か休日に遊びに誘おうとしてタイミング逃してたり。…別にあいつを目で追ってる訳じゃない。断じて違う。名前は人見知りな割に、懸命に仲良くなろうと努力している。それは認めてやりたい。
(相手が土方なのは、ムカつくけどな)
仕方ねェ、励ましてやるか。何で俺がこんな損な役回りしなくちゃならないんでィ。
(まぁ、惚れたモン負けか)
と、足を踏み出そうとした瞬間。
「苗字!」
憎い土方の声が廊下に響いた。思わずビクリと体を固め、踏み出そうとした足を引っ込める。どうやら土方が戻ってきたようだった。
「土方くん、どうしたの?」
「あの、よ」
「?」
ああ、本当に、
「来週の日曜、暇か?」
…くだらねェ。俺はそれ以上立ち聞きする気にもなれず、改めて下駄箱方向へ足を踏み出した。背中にあいつの嬉しそうな声を受けながら。
(損な役回りすら、俺には与えられない)
くだらないのは俺か。 / またチャンス逃してるし
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