このごろ、身体が疼いて仕方が無い。
彼と肌を合わせるのがとても心地よくて、あの快感を思い出す度に中心が熱くなってしまう。すっかり思惑通りに調教されてしまった。
でもはしたない女だと思われたくなくて本人には言い出せずに居た。そんなの言えるわけが無い。
「あ、っあ」
そしてついに今夜、ひとりで実行してしまった。彼と同じ部屋で暮らしているけど今日は任務で神威さんは帰らないから。いつも一緒に寝ているこのベッドで一人でこんなことをするなんて、後ろめたさを感じつつもそれすら今の私には快感になっていた。夜着の前を肌蹴させ、下着の中で割れ目を指で撫でていく。膨らんだ突起を擦れば同時に身体が跳ねた。
「神威さん、神威さ、あ」
彼に触られているのだと頭で考えながら自分を追い詰めていく。周りのことなんて頭に入らなくて声も段々大きくなっていき、爪先がピンと伸びる。
「イ、く、イッちゃうっ、あああっ」
びくびくと身体を丸めて頂点を迎える。ひくひくとあそこが震えているのが分かる。そしてやけに虚しい気分に陥ってしまう。ぼんやりとした頭でちり紙はどこだったかと上体を起こした時だった。
「!」
居るはずのない神威さんの姿が。そこにあった。
任務から帰って来たばかりなのか返り血のついたままで、それはもう楽しそうな笑顔を浮かべてベッドの傍らに立っていた。
「か、か、」
「ただいま名前」
「いつからそこ、に」
「名前、オナニーする時俺の名前呼ぶんだね」
顔が熱くなる。見られてしまった。こんなはしたないところを。大好きな神威さんに。
羞恥と後悔で頭がぐるぐるしてどうしようもならなくて、慌ててシーツを引っ張って頭からすっぽりと被った。こんなことしても意味が無いのは分かっているけど、それでもやはり神威さんの顔をどうしても見られない。
「なに隠れてんの」
「は、は、入るときはノックしてください!」
「俺の部屋なのに?」
くすくすと笑い混じりに言う彼についに私は何も言えなくなった。じんわりと目頭が熱くなる。
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。もう消えてしまいたい。
しゅるしゅるとシーツの向こうで布が擦れる音が聞こえる。やがて、すごい力でシーツを引っ張られて私の手から離れたそれは床に投げやられ、顔を上げると未だ楽しげに笑っている神威さんがこちらを見下ろしていた。
「なに泣いてんの」
「だ、って」
「大丈夫、別に変な顔してなかったから」
そんな問題じゃないです、と言おうとした私の唇を神威さんのそれが塞いだ。強引な口付けは簡単に私の意識を奪っていって。乱暴に動く舌に私も必死で応えた。
耳たぶを指先でなぞられて擽ったい。そして太腿に神威さんの下半身が押し付けられた。布越しに感じるそれは熱くて、硬い。下腹部がきゅんと熱くなる。やがて唇が離れ、私は拗ねた視線を向けた。
「、今日は帰らないんじゃなかったんですか」
「予定よりも早く終わったからね。名前にも会いたかったし」
ぐ、と腰を押し付けられ、そこの熱さを確認するように太腿を揺らせば神威さんの口角が上がった。
「よかったよ、早く帰ってきて。名前のオナニーが見れた」
「…はしたない女で、ごめんなさい」
視線を逸らすと神威さんはまたひとつくすりと笑って私の瞼に口付けた。
「好きだよ、そういう名前も。俺の調教の賜物だね」
頬を膨らませていると神威さんの手が私の夜着を完全に肌蹴させて胸の膨らみを包んだ。
「気持ちよかった?」
「っあ」
主張している突起に吸い付かれて、思わず声が漏れる。舌先で転がされるように弄られれば熱い息が零れた。
「んん、」
「自分の指で、俺のこと考えながらここ弄るのは」
彼の無骨な指が割れ目をなぞり、そこがひくりと収縮する。力の入らない腕を伸ばして神威さんの首に回した。
「神威さんがいないと、足りない、です…」
震える声で必死に紡げば彼は一瞬驚いた顔をしたけれど、すぐににいと深い笑みを浮かべた。そしてまた、唇が重なった。
「上等。ご褒美やらないとね」
そして結局懲りることなく、その声にまた私の下半身は疼くのだ。

20100525 / 疼く
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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