「へぇ、あいつが好きなのか」
「…!、総悟」
放課後、柱の影から土方死ねを見つめるストーカーじみた名前の背中に俺は声をかけた。途端、まるで嫌な奴に見つかったとでも言いたそうな顔をしやがったからにたりと笑って、見下すように名前を見る。
「へー、お前がねぇ、アイツをねぇ、へー」
「い、いいじゃない別に」
「雌豚にもついに春が来たか」
「ううう、」
「いい事知った。当分ネタにできるぜ」
頭の後ろで腕を組んで言い放つと名前が悔しそうに俺を睨む。ちなみにコイツは、俺の幼なじみ。そんで、
「ねえ総悟、あの人と仲いいんだよね?」
「仲良くはねぇけどな…それが何でィ」
「紹介、してくれないかな」
俺の好きな奴だってんだから、腹が立つ。
「…何で俺が」
「総悟しか頼める人いない、し」
なんでいつもいつもアイツばっかりなんだ。
「アイツは止めとけ」
「どうして?」
「女ァ泣かせるわ、自分勝手だわ、マヨだわ、いいとこひとつありゃしねェ」
「…いくら総悟でも、土方君の悪口言うと怒る」
名前が真剣になって俺を睨んできやがる。あー気に入らねぇ。
「つーかああ見えてアイツモテるんだぜ」
「…、知ってる」
「女はブスから美人まで、より取り見取り」
「…」
「名前みてぇな奴じゃ、1秒持たないままフラれて終わりだ」
「…分かってるよ!」
余り取り乱す事のない名前の大声に、さすがに驚いて目を丸くした。顔を上げてまた俺を睨んできたかと思ったら、その目には涙。
「でも、好きなんだもん。しょうがないでしょ…」
言うなり、名前は鞄を持ち直してばたばたと走っていってしまった。
「…なんでィ」
遠くなる背中を見つめながら、ぽつりと呟く。俺も帰ろうと下駄箱へ足を向けた。
「…」
泣かせたい訳じゃなかった。自分を想って泣かせるなら話は別だが、名前の涙はアイツを想っての涙で。気に入らない。
「…、俺だって好きなんだから、仕方ねェだろ」
溜息をついて俺は、携帯を取り出しカチカチとメールを打った。やけに指先はスムーズに動いていた。宛先は、憎くて憎くて仕方ねェクソマヨ野郎だ。


宛先:土方コノヤロー
題名:Re>
本文:アンタに、紹介したい奴がいます / へぇ、あいつが好きなんだ?
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -