「はあ、」
見慣れた自分の家へ戻ると漸く張り詰めていた肩から力が抜けて、布団にごろりと寝転がる。大きく息を吐きながらサングラスを机に置き片腕で目元を覆うと、昨夜の情景が頭に浮かび俺は慌てて飛び起きた。
長く使ってくたびれかけた布団の上に胡坐をかいて再度大きく溜息をつく。ずきずきと二日酔いで痛む頭を支えながら、今更押し寄せる後悔の念に固く目を閉じた。
「何やってんだ、俺は」
誰に言うでもなく呟けば部屋の静寂が際立ち、仰ぐように天井を見上げた。
名前さんが好きだ好きだと思っていたが、まさか手を出してしまうとは。そんな気は一切無かったといえば嘘になるが、…まさか。酔った勢いとはいえ許されないことをしてしまった。トムさんを裏切ってしまった。その罪悪感に俺は強く唇を噛んだ。
明日は仕事に行かなくてはいけない。あの人と会うのは避けられない。
「…考えても、しょうがねえか」
元々あれこれ考えるのは苦手だ。あの人をこれ以上裏切るわけにはいかない。名前さんに責任を押し付ける気も毛頭無い。あの腰に腕を絡めてしまった瞬間から、俺がするべき事はひとつ。それがどんな結果になろうと。

20110402 / 花の君
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