「臨也!」
私は息を切らしながら、弟の自宅へと駆け込んだ。
無駄に広いその部屋の中を見渡せば、いつも世話になっているらしい私と同い年の女性は見当たらない。むしろ好都合だと思った。
正面のチェアがこちらを向いたかと思えば、嬉しそうに笑った弟がそこに座っていた。
「姉さん!どうしたの、遊びに来たの?」
弾んだ声で言いながら椅子を立ち、私に駆け寄る臨也。頬に伸ばされた細い手を、私は遠慮無しに払った。自分に出来る限りの睨みをきかせてやれば、目の前の臨也は困ったように眉を下げる。一瞬悪い事をしたと気持ちが負けそうになるが、まさか私にした仕打ちを忘れたとは言わせない。その上で何事も無かったかのように振舞う臨也が、私は憎かった。
「どうしたの、機嫌悪い?」
まるで本当に、純粋な子供のように問いかけてくる臨也。憎いといえど、実の弟にこんな顔をされては許してしまいそうになる。でも今回ばかりは、そうはいかないのだ。
「機嫌が悪いかなんて、そんなの当たり前でしょ」
「何かあった?そうだ、俺姉さんに良い物買ってきたんだ。これで機嫌が、」
「たかしさんに、何をしたの!」
叫んだ瞬間、臨也の表情が冷めたものに変わった。たかしさんとは、私の結婚相手である。いや、あった。プロポーズされて、結婚式の段取りも少しずつ決めて幸せな日々を送っていた最中、つい先日その人に断りの連絡があった。しかも直接では無く、手紙で。何かに怯えているような、妙に畏まった文面が感じ取れた。何も理由を教えてくれないままなんて納得できなくて、携帯に連絡したが繋がらない。自宅に行っても空家だった。失礼を承知で会社に問い合わせてみれば、そこは既に倒産していた。あらゆる手段で彼と接触を試みたが、どれも失敗に終わった。
「ああ、アイツか」
ぽつりと、溜息混じりに臨也が呟いた。怒りに上がってしまいそうになる拳を強く握って耐える。以前から、同じような事があった。付き合う人付き合う人今回のような別れ方で、その度にこの弟は「俺が試してきたけど、あの男に姉さんは勿体無いよ」と言って笑っていた。その笑顔がとても純粋なものだったし、私も多少ブラコンな所もあって今まで強く責めることはしなかった。ただの、家族愛だと思っていたから。
今回は結婚までうまく話が進んでいたから臨也も諦めたと思っていたのに。違った。ここまでくるともう家族愛では話がつかない。
「姉さんに、あの男は合わないからさあ。ね?」
そう言って臨也は笑った。弟は、狂っている。昔から私の後ばかり追いかけてくる子だったけれどここまででは無かった。何がこうさせてしまったのか。
臨也のこの笑顔は最早私にとって恐怖でしかなくて、反省させるつもりで会いに来たけれど今はすぐにでも此処を離れたかった。
「、もう、いい。お願いだから私に関わらないで」
それだっけ言って此処を去ろうとした私の手首を、臨也が掴む。その力がとても強いもので、ぎくりと肩が揺れた。
「ねえ、姉さん」
こわい。弟の声が。私は床に視線を落としたまま振り返れずにいた。
「姉さんそろそろ結婚しないの?もういい歳でしょ」
「っ、誰のせいだと、!」
カッとなって振り向くと、すぐ目の前に臨也の顔があって驚く隙もないまま。唇が触れ合った。突然のことに頭がついていかなくて、私はただ目を見開く。そのまま二人で縺れるように床に倒れた。
「ん、っ」
頭は臨也が庇ってくれたのか痛みは無かったものの、背中が軽く打ち付けられて声が漏れた。それでも唇は離れない。むしろ艶かしい舌の感触を唇に感じて私は慌てて肩を押し返した。弟とキスしてるなんて、背徳感しか無くて気持ち悪い。
意外にもあっさり離れた臨也を見上げれば、今まで弟だと思っていた彼が妙に男らしく大きなものに見えて思わず怯む。
「うん、待たせてごめん。結婚しようか」
言いながら臨也は、やはり笑っていた。
「は?」
「姉さ、いや、名前がしたいって言うまで待つつもりでいたんだけど。ごめん、俺の言葉待っててくれたんだよね。やっぱり女の子だもんねえ」
臨也が何を言っているのか、私の頭ではさっぱり分からなかった。
「後腐れ無いよう俺が手を回して別れさせてあげてるのに、次々男作るからさあ。まだ遊んでいたいのかなって思ってたんだ」
ぞわりと、私の背筋に冷たいものが走った。
「俺は、いつでもいいよ」
そう言って微笑む弟は、とても無垢で純粋だった。腰を伝う手を振り払う事が出来ないまま私はその表情に釘付けになる。
「とりあえず手始めに、名前食べていい?」
太腿をなぞりながらスカートまで一緒にたくし上げられていk、そこで私はやっと我に返った。
「やっ、やめ、臨也、」
「こわいの?大丈夫、俺上手いから」
淡々と言って事を進めていく弟の手を押し返そうと試みるも、男の力にはやはり敵わなかい。ずっと弟だと思って可愛がってきた相手がいつの間にか私の知らない人になっていたような気がして、しかもこの状況に堪らず目頭が熱くなる。
「楽しみだなあ、名前の中にやっと入れる」
熱の篭った視線を受けながら臨也の指が下着越しに割れ目をなぞられて、ついに目尻から涙が零れた。器用に敏感な突起を見つけられて押し潰され、びくりと腰が震えてしまった事が恥ずかしくて両手で自分の顔を覆った。
「やめ、て、臨也」
「でも、ここ湿ってきたよ。名前も興奮してるんでしょ?弟に犯されて」
ぐりぐりと穴を押され蜜が下着に湿っていくのが自分でも分かって、頬に熱が集まる。臨也の指はそれでも構わず突起を押し潰しながら割れ目をなぞる。徐々に濡れた音が響きだすのを、私は確かに耳にした。
「いや、っ」
大きく頭を振って抵抗するも両手首を掴まれ頭上で纏められてしまう。そのまま臨也の頭が衣服の裾から割り込んできて器用に胸元を曝され、胸の谷間に鼻先を埋められた。
何度も口付けながらついに割れ目を撫でていた指は下着の脇から侵入し、直にそこに触れる。
くちゅり、と湿った音が聞こえて益々顔が熱くなった。
「臨、也…お願いだから、」
「可愛い、名前、名前、…」
何度弟の名前を呼んでも、蕩けた表情を浮かべ胸に顔を埋めたまま上げようとはしなかった。そして十分に濡れたそこに臨也の指が構いもせずに挿入される。
「あっ、あ、」
その指は性急に抽出を始め的確に私の弱い部分を刺激し、私はやがて思考が働かずただ声を漏らすのみとなっていった。静かな部屋に、私の声と、濡れた音と、目の前の臨也の荒い息だけが響く。
「ああ、名前、本当に可愛いな、そんな顔されたら俺もう我慢できないんだけど」
どこか興奮しているような臨也の声と、ベルトを外しているであろう金属音が耳に届いた。そして、
「あああっ、」
何の前触れも無く、そこに指よりも大きな肉棒が挿入された。幸か不幸か、濡れていたおかげで痛みはほとんど無かったけれど。ついに実の弟と一線を越えてしまった事に次々に涙が溢れた。
「臨、也っ、抜いてえ」
「名前の中、気持ち良い…想像してたより、全然、」
私の声など聞こえていないかのように臨也はうっとりと目を細めていた。がつがつと腰を打ち付けられる。
「ああ、あっ、あ、あ」
「名前、はあ、名前、」
快感に蝕まれ、喘ぐことしか出来なくなってしまった私を見下ろし臨也はひたすらに腰を振っていた。時折愛しげに私の名前を呼びながら。
「ねえ名前、中に、う、出していい?」
「!、やめ、て、それだけはっ」
まさかの弟の言葉に私はもう一度大きく首を振って叫んだ。しかし臨也は口元に薄ら笑いを浮かべたまま、構わず腰を打つ。本気だ、と、私は絶望の淵に立つ感覚に襲われた。
「お願い、だから、あっ、」
「大丈夫、どんな子が産まれようと、名前と俺との子なら愛せるよ」
もう何を言っても無駄なのだと、私はきつく目を閉じてただただ唇を噛んだ。

20101230(3万打企画 狂愛+近親相姦+裏) / 弟は狂っている
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