「よし、ばっちり」
クリスマス・イヴ。私はこの日の為に用意した白の可愛いワンピースに身を包み、全身鏡の前に立った。髪のセットもメイクもばっちり。男受けがいいと聞いたモコモコアイテムもマフラーとしてしっかり取り入れた。
「やば、早く出ないと!」
手首に巻いた革の時計をちらりと見て、私はばたばたと家を出る準備を早めた。コートを羽織り、静雄くんに買ってもらった香水を吹きかけて、ブーツに足を差し込む。彼へのプレゼントもしっかり持った。家の鍵をかけて向かうは、彼の待つ公園。

「はあ、…」
待ち合わせの公園。時間に遅れないようにと走ったが、時計を見直すとまだ10分前だった。安堵して息を整えながら辺りを見回し、まだ来て無いであろう静雄くんが分かりやすい場所に立つ。
見慣れたこの公園に、たくさんのイルミネーションが施されていてとても綺麗だった。周りにはやはりカップルが溢れかえり、まだ相手の来ていない私としては居たたまれない気持ちになって俯いた。
「ふう」
両手を握って、冷えた指先に暖かい息を吹きかける。
(今日は雪、降るのかな)
地面を見詰めながら、ふとそんな事を考えた。ホワイトクリスマスになったら素敵だなあ、なんて一人わくわくしていたら、不意に私の手を大きい掌が包んだ。
「!」
弾かれるように顔を上げれば、そこには静雄くんの顔があって二重で驚いて思わず肩が縮こまる。
「悪い、待たせたか」
そう言う静雄くんの格好は白いスーツに身を包み、黒いシャツを中に着込んで赤いマフラーをしていた。ピンク色のタイが可愛らしい。サングラスはいつもの見慣れたもので、ホッとした。
いつものバーテンの格好では無いこの姿に、私はただただ見詰めるしかできなくて。(折角のクリスマスにバーテン服で来られても困るけど)
「し、静雄くん」
「寒いか?とりあえずどっかに、」
「格好、いい、です」
「…あ?」
「格好いいです、今日の静雄くん」
ただ熱の篭った視線を向ける私に、静雄くんは困ったように顔を逸らして頭を掻いた。次いでサングラスを中指で持ち上げるその仕草で、私の熱が更にこみ上がる。そして視線がやっと合ったかと思えば、こつんと額がぶつかった。
「…今日のお前も、可愛い。ここにいるどの女よりも」
言うなり静雄くんは大きな掌で私の手を握りしめ、背を向けて歩き出した。かああとどんどん熱くなっていく頬、うるさい心臓をどうにか抑えながら私は足を踏み出した。

20101227 / とある恋人達のイヴ
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