あの平和島静雄が好きなんだ。
そう俺が気付くのには、大した時間は掛からなかった。

(分かりやす)
屋上での昼ご飯。俺は名前の作ってきた弁当を口に運びながら思った。目の前で顔を真っ赤にしながら静ちゃんにもうひとつの弁当を渡している名前。俺の幼馴染。そして初恋の女。俺の隣に座る新羅がにやにやとこちらを見ていて苛立ちが増す。
「何だよ新羅」
「いや?僕からしたら君も十分に分かりやすいんだけどなあ、って思ってふがっ」
とりあえずムカついたので殴っておいた。名前に視線を戻すと、弁当を受け取った静ちゃんに嬉しそうに微笑んでいる彼女がいて、溜息をつく代わりに玉子焼きを口に放り込んだ。今日のはやけに甘ったるい。…ああ。静ちゃんが甘いの好きなんだっけ。

「お前さあ、あの怪物の事好きだろ」
放課後の屋上で下校中の生徒を見下ろしながら言った。こうして見てると人間なんて蟻みたいだ。(どっかで聞いた台詞だ)
此処から見える景色にも飽き、背後の名前を振り返ると顔を真っ赤にしている彼女がいて後悔した。彼女は困ったように視線を泳がせた後思い出したように顔を上げた。
「か、怪物って言わないでって言ったじゃない」
「質問してるんだけど?」
柵に寄りかかって首を傾げれば名前はまた困ったように視線を落とした。綺麗だ。素直にそう思った。夕焼けに照らされる彼女がとても儚げで。
「幼馴染のことまでそんな風に調べ上げるの?趣味悪いよ臨也」
どこか怒ったように、しかし今更本気で咎めるつもりは無い様子で名前が肩を竦めた。情報とまではいかないこれは、ただの恋する人間の勘。今回ばかりは外れていて欲しかったよ。本音を隠して自嘲染みた笑みを浮かべた。
「まあね」
俺にも人間らしいところあるなあ、なんて。

20101103 / ずっと見てたんだ、分かるに決まってる
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