私は洗濯物を干す剣心の背中を見つめていた。
「うん、真っ白でござる」
パン、と嬉しそうに洗濯物を広げる彼。今ではこんな風に家事をそつなくこなしてぽやぽやとしているが、昔は誰もが恐れたあの"人斬り抜刀斎"の異名を持つ。私が知るのはまだ、優しくて柔らかい剣心だけ。
「こうやって見る限り、全然…」
知らない間に声に出してしまっていたのか、剣心は私を振り返ると首を傾げてきた。
「おろ?どうしたでござる?」
「ううん、なんでも」
慌てて言えば、剣心は「そうでござるか」とまた洗濯物を干し始めた。最後の一枚を干し終われば、袖をくくっていた紐を外した。
「終わった?」
「後は買い物に行って…薫殿と弥彦が帰る前に夕飯をの準備をするでござるよ」
薫さんと弥彦くんは朝から他道場へ出稽古に行っていた。要するに私と剣心は今二人きり。付き合い出してからは、二人きりになったのは初めてかもしれない。
それもそうだ。薫さんには付き合っているのは秘密にしているし、そもそも私と剣心はここに居候させてもらっている身。二人きりになりたいなどと言える立場では決して無い。
「折角二人きりなのに、つまんない」
「…休憩にするでござるか。お茶を持ってくるから、一緒に少しゆっくりしよう」
「本当?やったあ」
少し拗ねたフリをしてみれば剣心は小さく笑って気を遣ってくれた。私は笑って頷き、お茶を煎れにいった剣心を待った。
後ろに手をついて、ふと空を大きく見上げた。雲ひとつない空ってこうゆう事を言うのかな。最近はだんだん秋の空に変わってきて、なんだか高く感じる。頬を撫でる風が気持ちよくて私は目を閉じた。とても落ち着く。
「名前殿」
「あっ」
と、そこに剣心の見下ろす顔が現れた。驚いて声を上げた束の間、額に下りてきたのは彼の柔らかい唇。
「、」
いきなりの額への口付けに二重で驚いて、私は慌てて額を手で覆う。
「顔が真っ赤でござるよ」
「だ、だって剣心が!」
お盆を持った剣心が、クスクスと笑いながら私の隣に腰を下ろした。彼はあまりこうゆう事しない人だから、いきなりされるととても照れる。嬉しいけど。
「どうぞでござる、名前殿」
「あ、ありがとう」
渡された湯呑みを受け取ってそれを口に運んだ。おいしい。
そして二人してお茶を飲みながらぼんやりと空を見上げた。なんだか熟年夫婦みたいでうれしくなった。
「ね、二人きりになるの初めてだね」
「そうでござるな、最近は何かと色々忙しかったし…」
「なんか、変な気分、ならない?」
「変な気分とは?」
「んん…わかんない」
言って私は手足を投げ出して廊下に寝転がった。
ひんやりして気持ちよくて床に頬を寄せる
それを見た剣心が苦笑しながら私のめくれた着物の裾を直し、露になった足を隠してくれた。
「名前殿、女子なのだから少しは気を遣った方が」
「誰もいないからいいじゃない」
「拙者がいるでござる」
「だって剣心は変な目で見ないでしょ?」
私の言葉に剣心は「うーん」と眉を下げて考えるように唸った。するとゆっくりと私の頬に手を伸ばして、触れてくる。
「信用されてるでござるな、拙者は」
「剣心優しいもん」
「いつも優しいと思ったら大間違いでござる」
「え、」
どうゆう意味、と言おうとするもすぐに剣心の唇で唇を塞がれてしまってそれは叶わなかった。すぐに離れるかと思って言い返す言葉を頭の中で用意していたのに、なかなか離れずにむしろ口付けはどんどん深くなっていく。唇を噛むように愛撫されていたかと思えばいきなり進入してきた舌に私は驚き、ビクリとして剣心の着物を掴んだ。
「ん、っ」
でも口付けは止むことはなく、私の舌を絡めとられ吸うように愛撫される。そして私の息が続かなくなってきた頃、小さな水音をたててそれは離れた。
「、ふあ」
「変な気分とは、こうゆう事でござるか?」
「ん、…」
肩で息をする私を、剣心は笑顔で見下ろしている。いつもの優しい笑顔だけど、なんだか違う雰囲気を纏っている気がするのは私の気のせいだろうか。
「けんし、ん」
「色っぽいな、名前」
不安になってじっと見つめれば、初めて呼び捨てで名前を呼ばれてドキリとした。剣心はそのまま私の顔の横に手をついて、空いた手で先程直された着物の裾を割ると柔らかく太股を撫でてくる。それがくすぐったくて、膝を擦り合わせるように体をよじった。
「け、剣心」
「拙者も、変な目で名前を見ている男の一人だ」
「っ、」
剣心は私の首に顔を埋め、吸い付くように舌を這わせる。そうしながらも左手は私の太股を指先で伝い、だんだんと熱くなってきた中心に触れてしまった。その感触に私は小さく息を吐く。
「っ剣、…」
「名前」
いつの間にか乱されていた胸元にだんだん唇は下がっていき、何度もその辺りに口付けられる。たまに痛いくらいに強く吸われると、ビクリと私の腰は揺れた。その様子を剣心は面白そうに見つめてくる。
「剣心、だめだ、よ」
「何故?」
「か、薫さんが帰ってきたらっ、あ」
「夕方まで帰らないと言っていた」
このままではいけないと、私が何か言う間にも剣心からの愛撫が止む事は無く。気付けば胸元は完全に露にされてしまっていて、焦るように剣心の着物を引いた。
「け、剣心剣心」
「今度はなんだ?」
「わた、し、初めて、なの」
この年で初めてというのは笑われるだろうかと思ったがやはり怖さは拭えなくて、意を決して言う。すると剣心は柔らかく笑うとひとつ私に口付け、
「愛してる、名前」
止めてくれる気は無いんだ、と思いながらもその言葉が嬉しかった。(ここで止められたとしてもちょっとアレなんだけども)そして帯はそのままに、私の下半身と腰から上は完全に外気に晒されていた。
「綺麗だ、名前」
「は、恥ずかしいよ、明るくて」
「恥ずかしがることなんて無い」
そんなこと言われても恥ずかしいものは恥ずかしい、と。必死に腕と手で体を隠していたが、剣心の手によって両手首は頭の上で固定されてしまう。そして胸の頂点を唇で吸われ、力も抜けてゆく。
「あ、あっ」
空いた手は下半身に伸ばされ、濡れたそこを執拗に撫でられればもう喘ぐしか無くて。
「名前…」
「っけんし、」
あまり聞く事のない低い剣心の声で名前を呼ばれ胸の内とソコは更に熱くなり、胸の頂点を噛まれればピクリと体が震える。それを剣心は満足そうに見、細い、けれど男らしいゴツゴツとした指を私の中へと挿入してきた。溢れる蜜もそれを助けたのか、まだ痛くは無かった。
「っ、んぁ、あ」
中を探るように指を動かされ、ある一点に触れられると他と違う感覚にぎゅっと目を閉じた。目敏く剣心はそれに気付いて、ソコを執拗に擦りあげてくる。
「あ、ぁっ、だめそこ!」
「イイと言うんだそうゆう時は」
面白そうに聞こえた声に、見なくてもわかる、剣心はきっと今口の端を上げて私を見下ろしているんだろう。
「やあ、」
変な感覚に不安になり足を閉じようとするが、剣心がその間に体を入れてきてそれを阻止された。そして指を抜かれ、固定されていた手を離されて安堵の息をついて剣心を見れば彼はやはり小さく笑っていた。そして、
「っ、!」
彼は私の足の間に頭を埋めたかと思えば、ソコに舌を這わせてきた。
「け、剣心っ」
慌てて起き上がろうとするも、敏感なソコを吸われて力はまた抜けてしまい腰がビクリと揺れた。剣心はソコを重点的に愛撫してくる。ソコがヒクついてしまうのが、自分でもわかった。
「あ、ぁっ…」
ソコへの愛撫に、何か追い上げてくるようなものを体に感じてすぐ、私の体は一際大きく揺れ、その後には軽い脱力感。そしてそれを合図のように剣心はソコから離れた。
「、っはぁ…」
「良かったでござるか?」
ぼんやりとした目で剣心を見れば、彼は笑って首を傾げた。小さくコクリと頷いた私に口付けが落とされる。
「拙者ももう、限界だ」
言って袴を脱ぎ、剣心のモノが現れれば初めて見たそれに私は息を飲む。
「そんな大きいの、入らないよ」
「大丈夫でござる、名前のここはよく濡れているから」
言われて私は恥ずかしくなり、真っ赤になって視線を逸らす。すると硬い、剣心のモノが押し付けられた。
「力を、抜いていろ」
その言葉に私は小さく頷き、息を吐いた。そして剣心がゆっくりと腰を進めていく。と同時に下腹部に感じた圧迫感と、痛み。
「!、っだめ痛いっ」
「大丈夫だ、名前」
あまりの痛さにふるふると頭を振って抗うも、剣心は私の手を握って優しく囁き、ソレはゆっくりと私の中へと入った。
「は、っぁ」
「名前」
全部入ったとわかれば、自然と涙が瞳から零れる。剣心はその涙を舌で掬い、瞼に口付けた。私の名前を呼ぶ剣心の声にはどこか、余裕が無いように感じられた。
「…名前の中は、熱いでござるな」
「けん、しんも…熱いよ」
「名前に欲情してるんだ」
言ってもう一度瞼に口付けられ、剣心はゆっくりと腰を動かしだし熱い息を吐いた。剣心がうまいのか、やはりよく濡れていたからなのか、もう痛みはなく。私は与えられる快感を、ただただ感じていた。

「痛い…」
「…すまない」
初めてだった上に床でしてしまったせいか、私は痛む腰を押さえて自分の部屋の布団に寝転がった。剣心は申し訳なさそうに肩を落としている。
「名前殿のあのような姿を見たら、抑えが効かなかったでござる」
「あんなとこでするのもうヤダからね!恥ずかしかったんだからっ」
「でも名前殿よく感じて、」
「ああもううるさいー!」
「おろ」
もう全く反省してないこの人!確かに初めてだった割にすごく良かった、けど。
「けれど…名前殿の初めてを貰えて、ひとつになれて拙者は嬉しいでござるよ」
気持ちのいい笑顔で剣心がそんな事言うもんだから、私の膨れていた頬は簡単に元に戻ってしまった。
「私、も…剣心と結ばれて嬉しい」
「名前殿」
そして再び重なった唇に、私はこの上ない幸せを感じていた。

(剣心もやっぱり男なんだね)
(おろ?)
(なんでもない。それよりお買い物はいいの?)
(ハッ!)

20090618修正 / 秘め事
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