「コンドーム、だ?」
「ええ、コンドームです」
にこりと笑って、八戒が頷いた。
「三蔵、貴方が宿に泊まる度名前さんと情事に及んでいるのは知っています」
「…」
「毎回毎回、隣部屋にいる僕達の安眠を妨害しているという事実は、今は水に流しましょう」
「…」
「貴方、避妊してますか?」
「必要な、」
「くはありませんよね」
八戒にバッサリと切り捨てられ、三蔵は小さく舌打ちをした。
「今は牛魔王蘇生を阻止するという任務があるんです、僕達には」
「…」
「名前さん妊娠してしまったら、彼女を置いていかなくてはなりません。まさか、子連れで出来るなんて思ってはいませんよね?」
「思っちゃいねぇが、」
じゃあ、と。八戒は懐から取り出した小さな箱を三蔵の手に握らせた。
「お願いしますね」
有無を言わさぬ言い方に、いよいよ三蔵は溜息をついた。

「あー、いいお湯だった」
パタンと扉を閉めて、名前は浴室から出た。今夜も名前は三蔵と共に部屋泊まっていた。三蔵は持っていた新聞を適当に折り畳み、テーブルに置いた。
「三蔵さん、ビール飲んでいい?」
濡れた髪をタオルで拭きながら冷蔵庫をあさり、名前は窓辺で椅子に座る三蔵を振り返った。
「あー」
「やった、三蔵さんも飲む?」
こくりと頷くと、名前は二つの缶ビールを手に三蔵に歩み寄りそれを手渡した。プシュ、と気持ちのいい音と共に蓋が開く。
「かんぱいっ」
コツン、と一方的に缶を合わせると名前はゴクゴクと喉を鳴らしてそれを飲んだ。
「あー美味しいっ。この瞬間、生きててよかったと思うよねっ」
「オヤジかてめぇは」
「だってー、美味しいんだもん」
缶を口につけながら名前の目元は早くも蕩けていた。彼女は酒が強い方ではなかった。
「月が綺麗ー」
うっとりと、名前は窓縁に手をついて空を見上げた。それに誘われるように、三蔵は彼女の手を取り引き寄せる。
「名前」
「ん?」
どうしたのか、と名前が視線を移すのと同時に、二人の唇が重なった。
「、ん」
名前がゆっくりと目を閉じると、啄むように何度か口付けられた後唇を舐められる。同時に開いた名前の唇に、ねっとりと舌が侵入し歯列をなぞった。
「ん、…ぅ」
ぴくりと眉を寄せ名前もそれに応えるように舌を絡ませる。お互いがビールの味がし、ふわふわとした中で名前は三蔵の肩に手を置いた。
「ん、三蔵さん、ビールの味がするよ…」
「お互い様だ」
椅子に座る三蔵の足の間に立って見下ろすと、ニヤリと口端を上げて名前の腰を抱いた。胸の辺りにある三蔵の頭を柔らかく抱くと、キャミソールの裾から手が滑り込んでくる。
「ん、」
くすぐったそうに身をよじると、三蔵は更にキャミを捲り上げ#名前#の胸元に顔を埋めた。ちゅ、ちゅ、と吸われながら、時折舌を這わせられる。
「さんぞの…えっち」
「男だからな」
やがて舌は胸の頂へ滑り、そこを愛しげに撫でていく。ぴくりと名前の体が震えた。
「あ、っ」
「相変わらず、小せェ乳だな」
「悪かっ…ひゃ!」
いきなり頂点に歯を立てられ、名前は小さく声を上げた。三蔵はそれを見つめながら胸を揉み上げ、片方の手で太股を撫でる。
「天下の三蔵様がこんなだなんて、…皆が見たら卒倒しちゃうよ」
「は、知るかよ」
小さく鼻で笑うと、太股を撫でていた手をゆっくりと上げていき。スカートの中へ忍び込ませ、下着の上から秘部をなぞった。ヒクリと、そこが震えた。
「熱持ってんぞここ」
言いながら秘部をなぞり続けると微かに下着が湿り気を帯び、やがてそこは濡れてしまう。三蔵は満足そうに口端を上げた。
「パンツぐしょぐしょじゃねぇか」
「だっ、て…」
名前は羞恥から目を強く閉じる。三蔵はぐいぐいと撫でながら、下着越しに突起を見つけると爪を立ててそれを擦った。
「っ、あ、や」
三蔵の肩に置いていた名前の手に力が篭る。はぁ、と熱い息を吐いた。
「さ、三蔵さん…ちゃんと、」
「あ?」
「直、に…」
顔を赤く染める名前に応えてやるように、三蔵は下着をずらし指を中へ侵入させそこを直に撫でた。くちゅり、と小さな水音が部屋に響く。
「ああっ、あ」
「スゲー事んなってんぞ、ここ」
指に愛液を絡めるようにしながら秘部を擦り上げ、突起に触れる度に名前は喘ぎ声を漏らす。足に力が入らないのか、三蔵の肩を強く掴み前屈みに体を震わせていた。突起の周りを何度も指を往復させていきながら、やがてゆっくりと長い指を名前の中へと差し込んでいく。
「ひあっ、」
「こんなに濡れてんなら、慣らす必要ねぇな」
そこを広げるように指を増やし、抽出を繰り返す。三蔵は呟きながらすっかり熱を持った自身を解放するべく、空いた手でカチャカチャとベルトを外し、ジッパーを下ろした
。そこでふと昼間、八戒に釘を刺された事を思い出した。
「…チッ」
面倒くさそうに舌打ちをし、ゆっくりと名前から指を引き抜きポケットを漁った。急に止んだ刺激に、名前が不思議そうに目を開く。
「…どうしたの?」
「おい、」
「これ、つけて上に乗れ」
三蔵に差し出されたものを見て、名前は目を丸くした。
「何、これ、コンドーム?」
「いいから早く」
「自分で買ってきたの?」
「どうでもいいだろうが」
「……」
「…おい?」
名前は、肩を竦め大きな溜息をついた。三蔵が眉を寄せて彼女を見る。
「萎えた」
「…あ?」
「もう寝る」
「おい、待て」
「三蔵がコンドーム買うとこ想像して萎えた。生でしてくんないことにも萎えた」
一方的に言いながら名前は乱れた服もそのままに、三蔵から離れベッドへ向かった。
「ばかっ。お休みっ」
べー、と舌を出しそれきり名前は毛布に包まってしまった。すぐに聞こえてきた寝息に溜息をつき、三蔵は自分の下半身を見た。
「…どうしろっつーんだ」
ひとつも俺は悪くねぇ、と。三蔵は頭を抱えた。

(いや〜、昨夜は何の妨害もなく安眠できましたよ。あれ、どうしたんですか三蔵随分疲れた顔して)
(…(こいつまさか全部計算通りか))

20090713 / 八戒の策略
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