「ひじかたさん、」
ああ、俺は、
「ひじかたさんっ、」
お前を泣かせてばかりだ。


これが死ぬ前の走馬灯というやつだろうか、なんて呑気に考えた。今まで本当に色々あったように思う。
昔から無茶ばかりしてきた俺は運が良かったのか今まで生きながらえてきた。野望の為に道場を出て、新選組をつくって、誠を掲げ、近藤さんを護り守って、仲間と共に歩いて、歩いて、歩いて、この女に、恋をして、

(名前)

ああ、お前は泣く顔も可愛いな。これを言ったら、お前は怒るんだろうな。こんな時に冗談言わないでくださいって。それとも笑うだろうか、土方さんらしくないですと。そういえば結局お前は俺の名前を呼んではくれなかったな。
全てが終わったら、お前とやりたい事が色々あったんだよ。今まで新選組と近藤さんばかりで、お前に構ってやれなかったから。
よく俺について来てくれたな。最期までお前は泣くんだな。俺が泣かせてるのか。それはそれで、いい気分だ。
なぁ、名前。伝えたい事がたくさんあるんだ。お前とやりたい事があるんだ。涙を拭ってやりたい。肩を抱いてやりたい。頬に触れるお前の手が冷たいのか温かいのか分からない。
声が、でないんだ。体が、うごかない。声も、聞こえない。なぁ、名前。まだ泣いてるのか?最期なんだ、もっとお前の顔を見せてくれよ。笑ってくれ。
けど何でだろうな、まっくらでなにも見えない。



20090701 / 511
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