今日も今日とて、宿の部屋でゼロスさんとふたりきり。
今ではそれすら慣れてしまった私は、何を気にするでもなくまったりと読者に夢中になっていた。
「名前さーん、構ってくださいよー」
「んー、」
「僕つまらないんですけど」
「んー、」
「名前さーん」
「んー、」
「僕の事好きで好きでしょうがない名前さん?」
「んー、」
「はあ」
ガサガサ、パラパラ。
隣で何やらページをめくる音に私は顔を上げた。そちらを見ると、ゼロスさんが大判の本…というよりはアルバム?を開いて夢中になっているようだった。何を見てるのだろうと気になったが、それよりも私は自分の本の続きが気になり、再びそれに視線を戻した。
「…」
「…」
「…」
「…ふふ、」
「…」
「いやー、可愛いなあ」
「…」
「これは永久保存ですね」
「…」
一体何を読んでいるというのか。すこし気になって、ゆっくりとゼロスさんの手にしているものを覗き込んでみた。それは、
「…んなっ、」
アルバムだったのだ。しかも何故かそこに貼られる写真には、全て私が写っているではないか。私は驚愕し、ガタリと持っていた本を落とした。
「なっ、なんなんですかそのコレクション!」
以前、ゼロスさんが盗撮して私の写真を持ち歩いていた事は知っていたが。しかし今回は、量が問題である。分厚いアルバムの1ページ1ページに、びっしりと丁寧にそれが貼られている。ゼロスさんが私の様子に気付き、頬の緩んだ顔をこちらに向けた。
「あ、名前さんも見ます?ついに一冊埋まったんですよ。今二冊目に突入して、あ、この名前さんが僕のお気に入りで、」
「そんな事は聞いてません!いつの間にこんなっ、もう!」
「あ!ちょっと返してくださいよ!」
「返しません!こんなものは燃やします!フレアアロー!」
私は怒りのあまり、アルバムを高く投げ上げるとフレアアローでそれを射抜いてしまった。あ、天井焦げた。
「あああああ、」
「全くもう!」
ぱんぱん、と手を払っているとゼロスさんが脱力したようにうなだれて動かなくなってしまった。
「、僕の大事なコレクションが」
「あんなコレクション最低です!」
「だって、名前さん構ってくれないじゃないですか」
「う、」
「淋しいんですもん。そしたらあんなものに頼るしかないでしょう?」
ちらりと、ゼロスさんが私を見上げた。そ、そんな捨てられた子犬みたいな目で見ないで欲しい。私が悪いみたいではないか。やがて、私は小さく溜息をついた。
「わかりました、構ってあげますから」
「えっ、」
「だから盗撮はもうやめてくださいね」
「本当に?」
「本当です」
「っ、名前さーん!」
「ああもうくっつかないでください!」
「名前さん大好きですー!」
「はいはいっ」
子供みたいな顔で言うゼロスさんに、私は肩を竦めて微笑んだ。

(…あ。二冊目もあるんだっけ)



20090715 / なんですかそのコレクション
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