彼に付き纏われるようになってから、もう一週間とすこし。最近、妙な視線を感じるようになっていた。

「ん、?」
また、ふと視線を感じて振り向いた。しかし、そこに誰がいる訳でもなく。
私は気のせいかと、また前を向いてリナさん達の後をついていく。
(最近、多いなあ)
数日前からだろうか。何か、見られている気がする。瞬間辺りを見回しても、誰かがいる気配は無かった。殺意といったものは感じられないから、大丈夫ではあるだろうが。それでも、やはり。
「、気になる」
「何がですか?」
と、いきなり目の前にのほほんとした笑顔が現れた。
「きゃあ!」
「こんにちは、名前さん」
「び、び、びっくりした!ゼロスさんいきなり出てこないでくださいよ!」
私はドキドキと高鳴る胸を押さえながら、彼から少し距離をとる。本当にこの人は神出鬼没だ前を歩いていたリナさん達も、なんだなんだとこちらを振り返っていた。
「そんな人を幽霊みたいに言わないでくださいよ」
「もうっ、心臓に悪いです!」
「驚いた名前さんも、可愛いですけどね」
全く私を無視してにこにこと笑うゼロスさんに私は溜息をつく。そして、ゼロスさんの背後にリナさんが迫っている姿が見えた。
「ゼ・ロ・ス・ちゃん」
「あっ、リナさんこんにち、わ!?」
ゼロスさんが挨拶するのと同時に、リナさんは彼の首を羽交い締めにした。私はそれをぽかんと口を開けて見つめる。
「あんたね、名前が好きだからって最近来過ぎなんじゃないの!?」
「ちょっ、苦しいですってばリナさんっ」
「あんたが来るとねぇ、なんか知んないけど魔族に襲われる率が高くなんのよ!」
「そ、そんな、僕のせいにしないでくださいよっ」
「あんたのせいでしょうがこのゴキブリ魔族!」
「あいたたたっ」
ぐいぐいと更にリナさんが力を込めると、暴れたゼロスさんの懐からひらりと何枚かの紙が落ちた。これは、写真だろうか。
「ゼロスさん、何か落ちまし、!」
地面に落ちたそれを拾おうとそれに手を伸ばすと、何とそこに写っていたのは。
「こ、これ!私、っ?」
ババッと数枚の写真を拾い上げる。それにはどれも、撮られた記憶などないような私の姿が写っていた。
何でこんなものが、と肩を震わせているとゼロスさんの手が素早くそれを抜き取る。
「駄目ですっ、これは僕のコレクションです」
「コ、コレクションて」
「僕が日々汗水垂らして、名前さんのベストショットを狙った賜物ですから」
大切に写真を懐にしまい直すゼロスさん。ちょっと待って、じゃあまさか最近感じていたあの視線はゼロスさん?というよりは、ゼロスさんのカメラということだろうか。
「なっ、そ、っ馬鹿じゃないですか!?」
「うわー名前、随分気持ち悪い事されてんのね」
「気持ち悪いとはなんですかリナさん!これは僕の愛の結晶ですよ!」
「愛とか言うな愛とか。あんた魔族でしょうが」
「ゼロスさん」
「はい?」
「盗撮が犯罪って、知ってますか?」
「いいえ、僕魔族ですし」
平然と言って笑うゼロスさんに、グーパンをお見舞いしてやった。

(盗撮とか言う以前に彼はストーカーでした)



20090704 / 盗撮が犯罪って知ってますか?
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