沖田社会人



恋愛なんて興味がない、と言えば嘘になるけど。恋愛しようとは思わない。最後に恋したのはいつだっけと思い出すとそれは高校生のころである。そしてまだその彼のことが好きだったりしちゃって。
なんせ彼は私とは不釣り合いなぐらいイケメンなのだ。私なんかが彼と付き合うのはあまりにも恐れ多い。だけどお近づきにはなりたかったからそれはそれは努力をして、いつしかバカ言い合う仲にはなれたけど。彼の隣に並べば並ぶほど、彼女というものにはなれないなと確信した。だって彼モテるし。私よりいい女告白してるし。希望なんてありゃしねえ。
しかし彼はそれを頑なに断り続けていたそうで。ある意味期待してしまいそうになった。なったけど何もしなかった。彼も何もしてこなかった。やっぱり空想は空想。そんなこんなで高校時代は終わっちまったよ。

そしてわたしは今大学も卒業して社会人。バリバリ働いている。スーツを来て黒いヒールをカツカツと鳴らしながら会社へと向かう。
彼との関係はというと大学がバラバラになってしまった故にすっかり消え去ってしまったのだ。いや、実は大学入学とともに携帯をぶっ壊してメアドも連絡先も全部パアにしてしまって。高校の友人と連絡をとろうにも連絡してきてくれないとわからなくなったのだ。そして彼はしてこなかった内の一人である。
ショックといえばショックだったけど、まあこれはこれで次に踏み出せるかと思っていた。踏み出せなかったのが現実。こうして社会人となった今でも恋愛の話になると彼を思い出しまうのだ。

会社へと向かいながら何気なく思い出したがやっぱり私は今も彼が好きで、もし今歩いている途中ですれ違ったりなんかしちゃってまた会えるなら迷わず告白する。ほら、今見たいに私の横を彼がとおり、す…。

「あ。」
「なんでィ、名前じゃないかィ」

嘘だ。絶対嘘にきまっている。そんな偶然あっていいのか。目の前には少し大人びた彼の姿。驚きで全身石のように固まって動かない。

「あれ、人違いだったかねィ」
「いや、合ってる。名前は私」
「そりゃあこんなアホ面してるのは名前ぐらいだからねィ」
「なにそれ、酷い」
「それにしても久しぶりでさァ」
「確かにね」

以外と冷静な自分にびっくりしている。もっと慌てたりするかと思っていたが高校時代と同じように話せていると思う。高校時代と同じように胸はドキドキして、話してるだけで幸せ。やっぱ好きだなあ。

「総悟、私あんたのこと好きだ」
「は?突然なんですかィ?意味わかんねえ」
「そのままの意味、じゃあね」

会って数分で告白だけしていい逃げもずるいと思うけど残念な結果聞くのもいやだしなんか恥ずかしい。公共の面前で告白しておきながら言えることじゃないが。

「待ちなせェ、名前」
「嫌だと言ったら?」
「それは俺の性格を知って言ってるんですかィ?」

ああ、そういえば総悟のSはドSのSだったね。なんて笑いながら歩みを進めていたら急に手首を捕まれた。

「な、に、」
「俺から逃げられると思ってるのかィ」
「だってフラれるなんて嫌だもん」
「誰がフるって?」
「総悟が私を」
「なんで?」
「だって今さらだし」
「じゃあなんで俺はアンタを追って引き留めてるんでさァ」
「知らない、」

だって、だって。今さらだし、期待したくないし。ふい、と目をそらしていると彼に顎を捕まれて無理やり彼の方を向かされた。

「なにす、」
「アンタほどいじりがいのあるやつはこの世のなか何処探したっていねえよ」
「ん、」
「大学になってからこれが恋だってのに気が付いたんだけど連絡は取れなくなってるし」
「っすいません」
「だからやっと会えたのに逃がすなんてするわけねえでさァ」
「はい、」
「俺と付き合え、答えはもちろんイエスだよなァ」

これは夢?現実?答えは現実です。





20120115



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