「みかんさん似合いますね」
「みかんのねーちゃんかわいいのだ!」
「嫌がるほど似合わないわけではないと思いますわ」

口々にお褒めの言葉をかけてくれるみんな。私は鏡の前で死んだ目と向かい合っていた。本当に着てしまった…。普段着ないような服なために恥ずかしさしかない。壊滅的に似合わないわけではないとは思うが、他のみんなの方が似合っているので隣に並ぶと自分の似合わなさが際立つ気がした。

「みかん、往生際が悪いですわよ。私たちは先に行きますわ」

これで人前に出るのかあと鏡の前で自分と睨めっこしていると、呆れたみんとちゃんを筆頭にみんなは先に部屋を出て行った。

いい加減腹をくくるしかないか。

そう思って、ため息を一つこぼしながら店内へと向かった。



「れたすちゃんあぶない!」
「歩鈴ちゃん座ってて!」
「みんとちゃん手伝ってよ!」

忙しい。人数はいるはずなのに何故忙しい。今までどうやってお店は成り立っていたのだろうか。
私は自分の似合わなさなんてどうでもよくなっていた。

バタバタとお店を駆け回るのは私一人。
れたすちゃんはドジっ子だし、歩鈴ちゃんは危なっかしいし、みんとちゃんは楽な仕事だけしてお茶を飲んでいる。

ひいひい言いながら接客すること1時間、注文がひと段落したところで壁に背を預け一息つく。

「大忙しだな」

そんな私に白金が声をかけてきた。

「そういうなら手伝ってよ」
「残念ながら俺は忙しい」

忙しさなんて微塵も感じないんだけど、とジト目で彼を見やると彼はじっと私を見てきた。上から下まで視線を巡らせると、

「普通に似合うじゃねえか」

と、言った。

そういえばいつもとちがう格好をしているんだったと今更ながら恥ずかしくなる。しかも男の人に褒められた、というのもあってさらに気恥ずかしくなった。顔に熱が集まるのがわかる。

「あ、」

しかしその熱はすぐに引いて行く。
白金が指差したその先。そこには両手にお皿を持った歩鈴ちゃん。

今日のたった数時間で学んだ。

彼女に皿をもたせると高確率で割れる(れたすちゃんしかりである)。

「歩鈴ちゃん待った〜!」

そんな願いも虚しく、皿が宙を舞った。

「こんにちはー…!?」

その時だ。ちょうどお店の扉が開いてその先にいた桃色髪の女の子へと皿が飛んでいく。そしてそれは女の子の脇を通り抜けて壁にぶつかりパリンと音を立てた。

危機一髪といったところだ。お客さんになんてことを…!と青ざめながら彼女に駆け寄る。

「大丈夫ですか?!」
「あ、危なかったー…ってあれ?」

顔をあげた私は声をかけた私を見て驚いた顔をする。

「貴女は?その服着てるってことはもしかして5人目の?」

パァアと笑顔を浮かべながら彼女は私に聞いてきた。そう聞くということは彼女もミュウミュウの関係者なのだろう。もしかしたら彼女がいちごちゃん?なのかもしれない。

「んー、みんなが探しているミュウミュウとは違うみたいだけど、一応ミュウミュウ。橙野みかんです。よろしく」
「そっか!私は桃宮いちご!こちらこそよろしくにゃん!」

予想通り彼女がいちごちゃんだった。立ち上がった彼女と握手をする。いちごちゃんは嬉しそうに私の手を握ってくれた。
そんな私たちに後ろから激がとぶ。

「いちご!遅いですわ!早く着替えてなんとかしてくださいな!みかん一人じゃ可哀想でしてよ」
「だったらあんたが手伝いなさいよ!みんと!」

もう!と声を荒らげていちごちゃんは着替えに行く。
いちごちゃんもみんとちゃんも言い合っていたけど相手が嫌いな風には聞こえなかった。やっぱり喧嘩するほど仲がいいってやつだなあ、なんて思いながらいちごちゃんの背を見送りながら、

「いらっしゃいませなのだー!」
「片付けなきゃ…っ!!」

元気ハツラツとお客様に挨拶をする歩鈴ちゃんと、先ほど割れた皿を片付けようとして持ってきた箒に足を取られかけているれたすちゃんを見て、現実逃避をしたくなった。



「あああっ!」

私といちごちゃんがバタバタと走り回る店内に突然みんとちゃんの声が響いた。

「どうしたのみんとちゃん…」
「5人目のミュウミュウを見つけましたわ!」

バンっと机の上の雑誌を叩くみんとちゃん。
近くにいたのでその雑誌を覗き見てみると、そこには一人の女性が写っていた。

「あ、そういえば地震のときにいた方に似てますね」
「え、もっとあいそわるくなかった?」

れたすちゃん、いちごちゃんが集まってきて雑誌を見て言う。
私には分からないけれど話的に遺伝子を打ち込まれた時にみんな同じ場所に居たようだ。

「別人なんじゃないの?」

いちごちゃんは雑誌の人はミュウミュウではないと言う。
しかしその発言にみんとちゃんは鼻で笑って言った。

「あなたたちの目はふしあなですの?」

その後は一気に言われたものだから聞き逃してしまったが雑誌に載っている彼女を褒め称えている言葉を言っていた気がする。
そして心なしかみんとちゃんの目が輝いている。

「このお方こそ!まちがいなく私たちが探しもとめた最高の仲間!地球を救う真の仲間ですわ!」

みんとちゃんに圧倒されて言葉がでない。
それは私だけじゃなかったようでみんな黙りこんでいた。
そしてみんなすぐに気づいた。みんとちゃんは雑誌の彼女に憧れていて、会いたいんだなあと。

恋する女の子は可愛いと言うけれどそれに納得した瞬間だった。みんなも同じような気持ちらしく、微笑ましい目で見ていたら、それに気づいたみんとちゃんは顔を赤くした。

どうしたら雑誌の彼女に会えかるかという話になる。彼女は私たちとは違って芸能人。簡単に会えるわけじゃない。

そこへ白金がやってきた。

どうやら私たちが話している間に雑誌の彼女…藤原ざくろについて調べてくれたらしい。

また、彼女の所属している事務所がタレントを募集していることを教えてくれた。
そんな白金から衝撃的な発言がなされる。

「と、いうことでお前らにいちご、みんと、れたすそしてみかんに任務だ。オーディション受けてこい」
「えっ」

今なんて言った?

修正
20170307

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