あの後変身は私が元に戻りたいと思えば戻れた。

赤坂さんが紅茶とケーキを用意してくれてカフェの一席に座って食べる。ほかのミュウミュウの子たちがここに来るということで待つ間にと用意してくれたのだ。

「突然、巻き込んですみません」

赤坂さんは再び謝った。

「…大丈夫です。仕方のないことですから。もう吹っ切れました。やるならちゃんとやります」
「すみません…。もうすぐ、他の皆さんもこちらに来られると思うので」

そう言って赤坂さんはこのお店について説明し始めた。

「皆さんには遺伝子を打ち込んだ女の子を探してもらうという目的でこのお店で働いてもらっています。このお店には多くの女性が集まりますからね」

確かに今学校でもこのお店は話題だった。
私もここに来たいと思った人の一人である。

「お前もここで働くんだ」

さっきまで居なかった白金さんが言った。
手には可愛らしいエプロンがある。話が終わっていなくなったと思ったらそれをとりにいっていたのか。

「これ着て働け。もちろん給料は出す」
「予備があってよかったです」

白金さんに渡されたのはオレンジのひらひらとした可愛らしいメイド服のようなもの。

「頼んだぞ」

部活に入っていないから時間はある。問題ない。
問題があるとしたら…。

「わかりました。でもそれ、着るんですか?」
「問題あるか?」
「いや、その、可愛すぎかなあって」
「まあ確かに今のお前を見る限り着なさそうだな」

白金さんの言う通り私が今着ているのはトレーナーに短パンというかなりスポーティーな格好。白金さんが手にしているフリフリのエプロンとの落差が激しい。

「でもま、ミュウミュウ衣装と変わらないだろう」
「あれは不可抗力です!」

普段着ないからできればフリフリはちょっと遠慮願いたい。

「つーか敬語いらねえわ。あいつらも使ってねえし」
「あ、そう。じゃあそうする」
「それで?着ねえの?」
「着なきゃだめ?」
「ここで働くならな」

着たくない!と私は駄々をこねる。色々な案を出して見たけれど見事に却下された。一人だけ待遇はできないと。ちくしょう。

そんなことをしているとカフェの扉が開いた。視線を向けると青髪のお団子少女と緑髪のおっとりした少女がいる。

「こんにちは」
「あら、知らない子がいますわね」

緑の子、青の子の順だ。彼女らは私に気づくと声をかけてくる。

「こんにちは、みんとさん、れたすさん。彼女はみかんさん。貴女方と同じミュウミュウです」

赤坂さんが私のことを紹介してくれた。

「5人目、見つかったんですの?」
「あれ、でも彼女はあの時いなかったような…」
「あの時いなかったがこいつもミュウミュウだ。もう一人また別にいる」

話を聞く限りまだミュウミュウになる女の子は全員見つかっていないみたいだ。

「橙野みかんです。よろしくね」
「藍沢みんとですわ」
「碧川れたすです、よろしくお願いしますね」

自己紹介を交わす。
青い子、みんとちゃんはお嬢様らしく、所作が綺麗で見とれてしまう。緑の子、れたすちゃんはおっとりしているけれどとても丁寧な子ですごくいい子だった。

「あともう二人いるのですが…」
「あら、歩鈴も働くんですの?」

赤坂さんの言葉にみんとちゃんが聞き返す。

「ええ、ここにいていただいた方が情報も伝えやすいですしね」
「そうですわね」

みんとちゃんが納得の言葉を発した直後。

「やっほー!なのだー!」

勢い良くお店の扉が開いて黄髪の少女が元気良く入ってきた。

「歩鈴さん、こんにちは」
「れたすのおねーちゃんこんにちはなのだ!」
「全く、もう少し落ち着いて欲しいですわ」
「みんとのおねーちゃんもこんにちはなのだ!」

みんとちゃんもれたすちゃんも私と同じ年ぐらいに見えるが、笑顔の可愛らしい少女は私より幾分か年下だ。
彼女はみんとちゃんとれたすちゃんに挨拶を終えた後、私を見つけて駆け寄ってくる。

「おねーちゃんは誰なのだ?歩鈴と同んなじでミュウミュウになれるのだ?」
「そうみたい。みかんっていうの。よろしくね」
「みかんのおねーちゃんよろしくなのだー!」

歩鈴ちゃんは私の手を握るとぶんぶんとふる。元気があってよろしい。

「あといちごってのがいるのだけれど」
「いちごさんは私たちより遅くなるそうです」
「いちごの癖にねえ」

みんとちゃんの言い方に仲が悪いのだろうか。もしくは、喧嘩するほど仲がいいのか。

「みんと、れたす、こいつにこれを着せてやってくれ」

白金は二人に私のエプロンを見せる。

「あら、みかんの分もあるんですわね」
「予備の分があってな。でもこいつが着たくねえって駄々こねてるから連れてって着せろ」

このままだと本当に着せられる…!

そう思った私はそろりそろりと出口へ向かって足を忍ばせる。そんな私を逃すはずもなく。

「別にどうでもいいのですけれど逃げられると捕まえたくなるのは仕方ありませんよね」

肩を掴まれてゆっくりと後ろを向くと笑顔のみんとちゃんの姿が映る。

「えっとお…」
「逃がしませんわよみかん」

あっさりと捕まった私はずるずるとカフェの更衣室へと連行された。

修正
20170218

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