どうもこんにちは!私の名前は波瑠です!夢ノ咲学院でプロデューサーやってます。今日の放課後はプロデュース業務が入っていないのでおやすみ。決してプロデュース業務が嫌なわけじゃないけど。たまには休みたいでしょう!一番休んで欲しいのはあんず先輩なんだけど。あ、あんず先輩っていうのはプロデュース科の先輩で、なんでもできてすごい先輩です!私もあんず先輩みたいになれたらなあ。

そんなことを考えていると、きんこんかんとチャイムが鳴る。先生が今日はここまでと授業の終わりを告げた。ようやく昼休み、私のお腹もぐうとなる。私はいつもお弁当で、今日もそう。友人とおしゃべりしながらお弁当を食べた。それから眠い〜とか言いながらだらだらと残りの休み時間を過ごしていると、教室の入り口にいるクラスメイトから呼ばれた。

「波瑠、UNDEADの大神先輩が呼んでる〜」
「はーい、今行く!」

クラスメイトの声に廊下を見ると確かに大神先輩がいた。プロデュース科とアイドル科は少し離れているが、アイドルとプロデューサーの関係上、二つの教室の行き来はよくあることだ。とは言え、わざわざ来てもらって待たせるわけにも行かないので、早々に席を立ち、廊下に向かう。
廊下に出ると、大神先輩が遅えと愚痴を漏らした。相変わらずひどい先輩だ。
プロデューサーとして様々なユニットのプロデュースをするが、一応担当というものが決まっていて、私の担当は大神先輩のユニットであるUNDEADである。何か仕事関係で用事があったのだろうか?と思いながら私は大神先輩に声をかけた。

「もう、お待たせしました!用事があるなら連絡くれれば私が行ったのに」
「いや、べつに仕事の話じゃねえし。…今日空いてるか?」
「どこのユニットのプロデュースもありませんが…?UNDEDのプロデュース依頼ですか?でも仕事の話じゃないんですよね」
「いや、今日は休みだけど。ギターの楽譜買いに行くぞ。せっかく弾くならお前の好きな曲な方がいいだろ」
「はっ、こないだの約束のですかっ」

こないだの約束というのは、暇なときにギターの演奏を聴かせてくれるというものだ。本当に聴かせてくれると思っていなかったので嬉しくてずいと前のめりになる。

「もちろんです!」
「…ちけえよ」
「ああ、すみません嬉しくて!」

もともと私はアイドルというものが好きだ。そのアイドルのギターの演奏を生で聴けるなんて嬉しいことこの上ない。

「放課後、校門前に来い。一応HR終わったら連絡する」
「わかりました、私も連絡します!ありがとうございます!楽しみにしてますね!」

えへへと緩む頬を抑えることができない。そんな私を呆れ気味に見た大神先輩はため息を一つこぼした。

用件を伝えた大神先輩は自分の教室へと帰っていった。私は依然としてにやけ顔のまま友人の元に戻った。あまりにもにやけていたらしく、気持ち悪いと言われてしまった。解せぬ。

「あ、波瑠今日暇?プロデュース入ってなかったよね?」
「ごめん、今日大神先輩と約束しちゃった」
「ああ、それできてたのね」
「そう!」
「せっかくの休みなのに仕事ばかねえ」
「まあ、あんず先輩に比べたらまだまだだよ。それに今日はプロデュースじゃなくて買い物に行くだけだし」
「はあ!?」

友達が急に声を大にするのでびくりと肩を揺らしてしまった。そのせいで座っていた椅子がガタンと鳴り、周りの視線が私に集まり、恥ずかしくなって身を縮こませる。

「ちょっと、なに、なんなの???」
「それってデートじゃん」
「………デ、デデデデート!?!」

友人の言葉に今度は私が声を大きくしてしまった。また周りの視線を集めてしまい、さらに身を縮こませる。
言われてみれば、男女二人で出かける、つまりデートという概念には相当するかもしれない。けれど私と大神先輩は付き合ってないし、大神先輩にそんな気なんてない。絶対ない。

「デートだよ、デート。あんたそんなに大神先輩と仲良かったっけ?」
「デートじゃないよ、ただのお買い物。ギター弾いてくれる約束してて、その楽譜を選びに行くだけ、」
「なにそれ、波瑠のために弾いてくれるってこと?それってもしかして、


大神先輩名前に気があるんじゃない?」





担任のHRを終える声に、胸がどきりとした。ついに、放課後がやってきた。
携帯を確認すると、大神先輩から連絡は入っていない。私の方が早くHRが終わったようだ。とりあえず、HR終わりましたとSNSで連絡を入れる。それから校門へと向かった。校門についたくらいにようやく大神先輩から連絡から終わったと連絡が来た。待ってますねと返して、ため息を吐いた。
昼間の友人の言葉が忘れられなくて、落ち着かない。
デート、でーと、でえと。
いやいやそんなまさか。

「波瑠、」

もんもんと友人の言葉について考えていると、大神先輩の私を呼ぶ声が聞こえた。

「わりい、待たせた」
「全然大丈夫です!」

悩むのはあまり得意ではない。もやもやするのなら直接聞けばいいと思うのが私の考えだ。
私は大神先輩が目に入るやいなや、

「大神先輩、ちょっと聞いてもいいですか!」

そう言って詰め寄る。

「今日のこれってデートなんですか!?」

私の言葉に大神先輩は驚いたように目を丸くする。やはり大神先輩にはそんな気はなかったようだ。
そうだよね、大神先輩が私とデートしてくれるなんて、おこがましいにもほどがある。友人は何を言ってくれたんだ。恥ずかしい。

「ははは、ごめんなさい冗談ですよお、」
「そうだって言ったら?」

え。

「そうだって言ったらどうすんだ?行くのやめんのか?」

私は冗談だと笑い飛ばそうとしていた。
それなのに、さっきまで驚いた表情をしていたはずの大神先輩は真剣な顔で私を見ていた。

それは一体どういう意味なんですか。

「い、行きます…」

数秒迷った私が出した答えはそれで。
行くぞと私に声をかけて歩き出した大神先輩の後を、ざわつく心のまま追いかけた。


20190324

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