ぽかぽかと暖かい陽気に胸が高鳴る。ひらりと目の前に落ちてきた桜の花びらを捕まえようとしたらするりとすり抜けて飛んで言ってしまった。それに少しだけむすっとしていると、うしろからクスクス笑い声が聞こえてきた。

「真緒くん、笑わないでよ」
「いや、悪い。かわいいなあって」

真緒くんはいつもそうだ。可愛いだとか、好きだとか。ストレートに普通の会話のように私に言う。そして私はいつもそれに照れてしまう。そんな私を真緒くんはさらに愛おしそうな目で見てくるから、恥ずかしいやら悔しいやらの感情をぐるっとまとめて勢いのまま真緒くんに抱きついた。彼は驚きながらもしっかりと支えてくれる。

「も〜真緒くんの馬鹿」
「馬鹿はないだろ〜あ、ほら、とれたぞ」

私の前に握りこぶしを持ってくる真緒くん。手のひらを開くと中にはしっかりと桜の花びらが握られていた。

「器用だね」
「まあ、これくらいしか取り柄がないしな」

そう言って苦笑いして見せる真緒くん。

「そんなことないよ、私真緒くんのいいところいっぱい知ってる」
「そっか、ありがとな〜お前がそう言ってくれるだけでいいよ」
「私ね、真緒くんの歌声が好き。ねえ、トリスタの曲でさ、桜の曲あったよね?歌ってよ。聞きたい」
「え?ここで?」
「そ、今」

周りにはそれほど多くもないが人がいないわけではない。そんな中で歌うのに抵抗があるのか、真緒くんは少し戸惑って見せた。さっき恥ずかしい思いをさせたんだから真緒くんも恥ずかしい思いをすればいいなんて思っていたりいなかったり。
優しい真緒くんはきっと、歌ってくれるんだろうな。


20180417
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -