※ライブしてません
※エキセントリック微ネタバレ
ふんふんと鼻歌を歌いながら累は鏡の前でくるりと回ってみせた。赤と白を基調とした衣装は細部まで綿密に作られていて、これを作った人のこだわりが見える。
「やっぱり宗の衣装が一番落ち着くわ」
幸せそうに笑った累は鏡の自分見て満足そうにひとりごちる。
「累ねえさん着替えた?」
「ええ。ふふ、夏目も着替えたのね、似合っているわ」
「累ねえさんも。兄さんたちも待ってるヨ。行こう」
そう言って夏目が手を差し出す。累は嬉しそうに手を取った。
「それで?零は来た?」
「いやまダ。連絡はいってるはずなんだけどネ」
「来ないなら来ないでいいけどせっかくなのだから来て欲しいわ」
「おや、珍しい。そんなこというなんテ」
「せっかくの素敵な衣装だもの、揃わなきゃ意味ないわ」
ふふっと笑いながら累は夏目の頭に乗る小さなハットを正しい位置に直した。
累たちが更衣室としていた部屋から抜けるとそこには、渉と奏汰、それから宗がいた。赤と白を基調とした累と揃いの衣装を着ている、それは、宗がこの五人のためだけに作った衣装だった。
「問題はないかね?」
「ええ、大丈夫よ」
「しかしこんなものを作っているとは思いませんでした!素敵なサプライズに天にも昇るような気持ちですよ!」
いつにも増して笑顔を咲かせている渉はポポポンッと星を降らせた。と、言ってもフィルムに入った飴玉であるが。床に落ちる前に渉の鳩が空中で捕まえていつの間にか用意された机の上の籠の中に入れた。
「それで?零は?」
「まだきてませんよ〜どこをほっつき歩いてあるんでしょうね〜」
奏汰が胸元のリボンを手で遊びながら答えた。
その時、ガチャリと音を立てて部屋の扉が開いた。
「わり〜遅くなった」
だらりとした態度で零が部屋に入ってきた。
「ええ、ほんとに!遅いわよ!」
それにいの一番に反応したのは累で、入ってくるなり彼の腕をわっしと掴んだ。
「宗、零の衣装は?」
「頼んだよ」
「ええ、」
「は?なに?どうなってんの?」
累は宗から零の衣装を受け取っておくの更衣室へと零を引きずり行く。ろくに説明を受けていない零は訳もわからず累に引きずられた。
零はひきづられながら累を見上げる。横顔はどこか楽しげで、少しだけ不気味である。なんせ、そばに自分がいるからだ。大嫌いで仕方のない零の腕をとって上機嫌なんて想像ができるわけなかった。
「とっとと着替えなさい」
手渡された衣装はもちろん他の5人と揃いの衣装で。零は累が上機嫌な理由を理解した。
「早くして。それとも…私に着替えさせて欲しいの?」
「待て待て待て」
にやりと笑って零の制服を掴みにかかる累。そんな累に珍しく零はたじたじになった。まさにいつもの立場逆転。いつもと違いすぎる累に動揺して、せまる累の胸を手で遮りながら落ち着かせようとする零。
そんなとき、部屋の扉が開いた。
「兄さんたち、忘れ物ーーーーー、」
入ってきたのは夏目で、今の状況、累が零に迫っている状況を見た彼は、それはそれは面白そうに笑って、
「邪魔したネ」
そう言ってパタンと扉を閉めた。
「夏目待ちやがれ!助けろ!!!」
累越しに扉へ叫ぶが、零の声はもう夏目には届かない。
部屋に残ったのは不敵に笑う累と、引きつった笑みを浮かべる零だけだった。
20180420