その日あんずは少し遠出をして、大きな公園で行われていたお祭りへと足を運んでいた。この公園では月に一回屋台を出したり、ステージにて様々な人がパフォーマンスが行われるお祭りが行われていた。

屋台を周り、友人と楽しんでいると、近くから言い争いをする声が聞こえる。あまりにもぎゃあぎゃあと言い争っているために道行く人はみんな揃って振り返っている。あんずもその中の一人で、言い争っている方を見てみると、ピンクの髪の女の子が男に絡まれていた。

何を隠そう、累と零である。
学院内では見慣れた光景となっているこの二人のやりとり。普段ならいつものことかと周りも気にはしないのだが、ここは学院の外だ。二人は悪め立ちをしていた。

「しつこいわね!いい加減にして!」
「お前が逃げなきゃいい話じゃね〜か」
「ちょっと離しなさいよ!」

零は累の腕を掴んで引き止めた。特段理由があるわけではない。ただ、累をからかって遊んでいるだけだ。それを累もわかっているから苛立つばかりなのだ。

二人はとても目立っていたが、周りはその様子を見ているだけで誰も助けに行こうとしないようだ。それもそうだろう。厄介ごとに自ら頭を突っ込んで行く人などいない。

しかしあんずは違った。
正義感の強いあんずは友人の制止の声をスルーして二人の元へ向かう。

彼女が困っているからやめてください、とあんずは真っ直ぐ零を見て告げた。

そのあんずを見た言い争いをしていた二人はぴたりと動きを止めた。

そして零は腹を抱えて笑いだし、それと対照的に累は解せないと言いたげにあんずを見てしかめっ面をしていた。
なぜ零が笑っているかわからないあんずはぽかんとしてしまう。
そんなあんずに零は言った。

「残念だがこいつは男だぜ?」

零はボールのように累の頭をポンポンと叩きながらなおも笑い続ける。
それに怒りが頂点に達したのか、累は渾身の蹴りを零にお見舞いした。
あんずは思わずぎょっとして地面に蹲ってしまった零を心配して見やるが、累は全く気にかけた様子もない。

「うるさくて悪かったわね。でもこいつの言った通り…こんな格好だけど私は男よ」

あんずににこりと微笑んだ累はやはり女の子にしか見えない。
あんずは目の前で起こる衝撃の展開にただ驚くことしかできなかった。

「まあ、そういうことだから私は大丈夫よ。でも…心配してくれて嬉しかったわ」

ありがとう、とお礼を告げた累は隣の零に視線を向ける。

「ほら、いつまで蹲ってるのよ。あんたのせいで恥かいたじゃない」
「誰のせいでこうなったと思ってんだよ」

零はじとりと下から累のことを見たが、累はさあ?と知らんぷりをして零に背を向けた。

「あ、よかったらこのあとあっちのステージでライブするから見に来てくれると嬉しいわ」

累はあんずにそれだけ告げると未だに圧倒されているあんずも、零のこともほっぽり出して歩いて行ってしまう。

「ったくお転婆なお姫様だよ。ああ、あんた、悪かったな」

蹲っていた零は立ち上がってあんずにそう告げ、累の後を追っていってしまった。累は加減せずに蹴りを入れたのだろう、零はお腹に手を当てていてえ…と呟いていた。が、立ち上がって歩けるくらいだから大丈夫だろう。

そうして二人はあっという間に去って行ってしまったのだが…残されたあんずは最後まで圧倒されてしまって、友人が近づいて来るまで呆然としてしまっていたのであった。



20170501
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