天気の良い昼さがり、昼食を終えた累はカフェテラスから教室へ戻ろうと夢ノ咲学院を歩いていました。
すると、噴水のところで奏汰が水浴びをしているところに遭遇しました。しかし奏汰の様子が変です。何故か頭には大きな白い耳。洋服も、夢ノ咲の制服ではなく、それから首から時計を下げていました。

「どうしたのその格好」
「なにかおかしかったですか?」

奏汰は頭をひねりながら自分の格好を確認します。

「似合わないとかじゃないわよ。でもなんで耳なんてつけてるのよ」
「しろうさぎ ですからあたりまえです おかしなことをいいますね」

自らを白兎と言った奏汰。その奏汰の胸元でカチコチと針を進める時計を見た累は、きっと不思議の国のアリスをモチーフにしているのであろうと思いました。渉にでも付き合わされているのだろうと思った累は、特に気にすることもなく、話を続けました。

「じゃあ白兎さん?急がなくていいのかしら?確か用事があるんじゃない?」

不思議の国のアリスと同じであれば、白兎はハートの女王の元へ行くのに遅刻しそうで急いでいなければならない。おっとりした奏汰には似合わないなあと思わずくすりと笑ってしまいました。

奏汰はしばらく考え込んだ後に、

「そうでした!」

と言ってざぶりと音を立てて噴水からあがってきました。
しかし、立ち止まってしまいます。

「ほらほら急がないと遅刻しちゃうわよ?」
「う〜ん、でもばしょがわかりません。いちばん おおきなき のところへ いきたいのですが つれていってくれませんか?」

奏汰は困った顔で累に聞いた。
累は仕方ないなあと思いながらも、

「わかったわ」

そう言って奏汰をつれて学院で一番大きな木に向かいました。

するとなんということでしょう、木の根元に大きな穴が空いています。いつ誰が彫ったのでしょうか。

「この穴、どこまで続いているのかしら」

恐る恐る覗き込む累。
後ろで奏汰が笑う声が聞こえました。

「いってみれば わかりますよ」

えっと累が振り返ろうとする前に、背中をとんと押されました。穴を覗き込んでいた累は真っ逆さまに落ち、奏汰の笑い声が遠ざかって行きます。
穴の中は無重力状態で、累の体は重みによってふわふわとゆっくり落ちて行きました。
道中は暗闇でしたが、急に周りが明るくなります。累が下を見ると地面が見えました。ゆっくりと体制を整えた累は華麗に着地します。

そこは大きな広間になっていて、扉が一つだけありました。



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