「あ、いた。探したよ〜」

薫はとある教室の扉を開けてソファーの背から飛び出る水色のアホ毛を見てそう言った。

室内は沢山の水槽が所狭しと並んでいて、優雅に魚たちが泳いでいた。それに対してその中央のソファーで息苦しそうに体育座りをしていたのが薫の探し人である。

「ねえ、累なんだけど綺麗さっぱり忘れたわけじゃなさそうなんだよね。夢に見るって言われたんだけど。幸い一緒にいる人の顔はわからないし覚えてないって言ってたけどね。魔法使いくんの魔法は完璧じゃなかったの?」

薫がそう言うが、返事はなく、まるで独り言のようになってしまった。

「え、聞いてる?」

薫は心配なってソファーの前に回り込む。するとそこにはムスッとした顔をした彼が目をぱっちり開けていた。

「ずるいです」
「え?」
「ぼくだってあいたいのに。れいなんかいちばんにあいにいってました。みんなほんとはいっしょにいたいくせに。だからまほうつかいさんのまほうだってしっぱいしてるんです」
「ストップストップ!こわいから!」

いつもの彼らしからぬ言葉の量と早口に引きつった顔をする薫。

「そんなに会いたいなら会えばいいじゃん」
「…わかってます」

そう言いながら彼が累に合わないのは、心のどこかでそのまま幸せでいて欲しいと思っているから。

「みんな我儘だよね。忘れさせておきながら思い出して欲しいとか。累も累でせっかく守ってくれるって言うのにそれが嫌なんて。みんな我儘。でもそれが朔間さんや奏汰くんや、累らしいと。俺は思うよ」
「………そうですか」

彼は少し間をおいて、それから一言返してまたムスッとした顔を浮かべた。



20180727
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