かつん。

一つ階段を降りて、扉を開けた先にいる彼が自分を見てどんな顔をするのか想像する。

かつん。

もう一つ階段を降りて、そこにいる彼になんて言ってやろうかと考える。

かつん、かつん、かつん。

ゆっくりと階段を降りて、目的の扉の前についた。
累の手によって扉が開かれる。

「やっと、見つけた、」

キィと軋無音を響かせながら開いた扉の先には、まるでわかっていたかのように夏目がいた。

「時間の問題だと思っていたヨ。僕ごときの力ジャ止められるわけないっテ。

なんで戻ってきちゃったのサ、累ねえさん」

酷く悲しそうな顔で夏目はそこにいた。

なんで、なんて野暮なことは聞かないでほしい。
累が累である限り、誰にも縛られたくないし、自分が思った通りに進むのだ。

自分が大好きな五人とともに、進んでいきたいのだ。

「馬鹿ね、私を誰だと思ってるの?」
「そうサ、知っていて魔法をかけタ。ねえさんが幸せになれる魔法をネ。幸せになれるはずだったんダ」
「あのねえ、私の幸せを勝手に決めつけないでくれる?」

累は夏目にかけるにしては珍しいくらい冷たい声色を出した。それからつかつかと扉の前から夏目の元へと足を進める。怒っているのは一目瞭然だった。

夏目は一発くらい殴られるのは覚悟していたため、それを受け入れるように静かに目を閉じた。
悪いのは全部自分にしてくれればいいと、そう思っていたからだ。

なのに、夏目が感じたのは暖かいぬくもり。まるで幼子をあやすように、背中をポンポンと優しく叩かれていた。

「ごめんね、夏目。私が弱かったから、あなたに全部背負わせてしまった。ごめんなさい」

違う、姉さんのせいじゃない。
そう言いたかったのに、言葉は出なかった。
その代わりに、ずっと望んでいたその温もりを離さないように、累の背中に自分の腕を回した。

「子供扱いしないでくれないかナ」
「別にしてないわよ。でも夏目は私の弟のようなものだから、どうしても甘やかしたくなっちゃのよね

まあでも、」

累はそっと夏目から離れる。
それから夏目の額に向けて中指を弾いた。

「…っ、痛いヨ」
「そりゃあお仕置きなんだから当たり前よ。今回のこと怒っていないわけがないでしょう。それで許してあげるんだから感謝しなさいよ」

額を抑えながら夏目は拗ねたような表情をする。
それを見て累は楽しそうにくすくすと笑った。


20181107
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