「いい?あいつには近づいちゃダメ。少なくとも今は」
瀬名は司によく言い聞かせるように言った。それはまるで母親のようだと司思った。思わずそれを口に出してしまいそうになった司だが、瀬名の、
「いい?」
という再確認の声が先にかき消された。
「なんででしょう瀬名先輩」
「めんどくさいから。かさくんは知らなくていいこと」
瀬名ははっきりとしたことは言わなかった。それに納得するような司ではない。
「いーから。あと、アイツを女の子扱いするのもダメだからね。そういうの一番嫌うから」
「鳴上先輩とはまた違うのですか?」
「よくわかったじゃん」
「はあ…そうなのですか…」
全く納得した様子のない司。理解できないと言ったような顔だ。
「理解しなくていいよ。理解できるような次元にいないんだから。アイツもそしてアイツも」
瀬名は思い出していた。
自分の大事な王のことを。
累と彼は似ていると瀬名は思っていた。
守りたかったのに守らせてくれなかった。守っていたはずなのに守れなかった。
「今日の瀬名先輩はおかしいです」
「なあにい、そんなに叱られたいわけえ?」
「誰もそんなことを言っていないでしょう!」
何も知らない司からしたら、今日の瀬名はおかしなことばかりすると思うだろう。
でももし、あの場にもう少し留まっていたら、せっかく彼らが守っているものが崩れてしまうかもしれなかった。あれは彼らの問題で、誰も介入はいけないのだ。
だから自分には関係ない話。
…瀬名はまた、かつての友を思い出していた。
20180911