-Side S-

土曜日に練習試合があるというから白石ところに話を聞きに来た。そこで彼女に会った。名前も知らないクラスも知らなかった。ただ目があっただけの彼女。なんとなく覚えていただけの彼女。

椅子に座る白石を超えた向こうに机に伏せている女の子が見えた。全く彼女だとは思っていなかったし、たまたま視界に入っていただけである。たまたま彼女が顔を上げた瞬間に俺も彼女を見て目があって。彼女は顔を赤らめるでもなんでもなくにこりと笑っただけだった。俺も笑い返す。それだけたった。特に会話をするだけでもなく、それだけ。彼女は机に伏せ直してしまった。

普通のことだ。なんてことはない。
けれどもう少し彼女と話して見たいと思った。ただの興味である。

「名字さんと知り合いなん?」

白石が俺の視線が外れたことに気がついて話しかけてきた。

「ほー、名字さんっちいうと?」
「おん。なんやただ目がおうただけか」
「ん、まあ、」

確かに、始まりは目があっただけ。それだけである。

「あー、で。練習試合やけど」

だから白石との話に戻ればすぐ忘れてしまう。

今日も今日とて彼女は変わらない一日を過ごすのだ。

20141108

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