「あ、」

それはデジャブとしか言えないような状況だった。
目の前の人物とこうして会うのは二回目だ。

「どうも、」
「ああ、どうも」

目の前の千歳くんに挨拶をすると挨拶が帰ってくる。一応彼とは知り合いの位置にいるから挨拶をすることは変なことではない。向こうから話しかけてきたなら尚更だ。
にこりと笑う千歳くんに心臓がドクンドクンと動きを速める。

もっと近づきたい。

そう思うけれど私は逃げ出した。挨拶をしてそのまま何事もなかったかのように歩き出したのだ。
怖くて近づけない。どうせ彼のトクベツでもなんでもないのに近づいても仕方ない。近づいて私に興味を持っていないことが分かってしまうのが嫌だった。

彼は私を引きとめなかった。やっぱり私はただのモブでモノクロの世界の住人でしかない。
でも、ただ一言挨拶を交わしただけ、それだけでも私を覚えてくれて居たのが分かって嬉しかった。やっぱりもっと話しかけてみればよかったかなと思ってしまう。
もう一歩進む勇気を誰かください。

今日も今日とて変わらない一日を過ごすのだ。

20140831

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