ナンパなんてされたことはあるわけもない。可愛くもなんともないので。当たり前。
この都会である大阪では可愛い子ならばナンパされることもしばしばある。

それを横目に素通りするのが私だ。

可愛らしいワンピースを着てメイクバッチリな女の子二人がだるっと腰パンして(腰パンする人なんて本当にいるんだな)明るい髪色の男たちにナンパされている。羨ましいとは思わない。
そして所詮その世界もモノクロだ。あの彼らのきらめきではない。あのきらめきであれば羨ましいと思う。一種の憧れだ。一生私が輝けることはないだろうけど。

「何やっとんのや!!!」

そんなモノクロの世界が色づいた。

若干ビビりつつも女の子たちをかばうように前に立つ彼の名は忍足謙也という。同じクラスである私は彼のただのクラスメイトである。

「何?しりあいなの?」
「ち、ちがうけど…でも嫌がっとるやろ!」

彼の登場に男たちは引き下がるかと思いきやそんなことはなかった。
まあ、彼は男前ではあるがヘタレである。年下の財前光に馬鹿にされているような節が多々あるように多少アホではないかというのが私の見解である。

それにしても男たちは引き下がらなかったがこの後どうするのだろうか。
そこでふと気付いたが少し離れたところに色づいた空間がもう一つあることに気がついた。財前だ。

彼は遠巻きに忍足とナンパ男たちを見ている。彼の心境をいうならめんどくさいだろう。顔がそう言っている。この二人は部内でも仲がいいはずだから遊びにでも来ていたのだろう。忍足に巻き込まれて財前も御愁傷様だ。

財前は仕方ないと言うような感じで忍足の元へと歩き出した。助け舟を出してやる気になったのだろう。
その時すでに忍足がナンパ男の元へ行って5分ほどだったあとだったが。

「謙也さん遅い」
「ああっ!財前おま、どこおったんや!」
「何?あんたの連れ?こいつ邪魔やから連れてってくれへん?」

ナンパ男の言葉にかなりの苛立ちを感じたような財前。思いっきり舌打ちをしている。

「邪魔なんはあんたらや、うざい」

ギロリと財前が睨むとナンパ男は怯む。財前も耳には5輪ピアス、服装も軽くパンクなものでそれに睨まれたら普通なら怖いと思う。ナンパ男も例外ではない。

「っお、おぼえてろ!」

ナンパ男は負け犬が言いそうなセリフを残して去って行った。人混みに入った彼はただのモノクロすぎて追うことは不可能だった。

それから彼らは女の子たちにお礼がわりにカフェにでも行かないかと誘われているのが見えた。財前のめんどくさそうな顔はさっきより酷い。忍足も戸惑っている。
ここで同じクラスで忍足とも面識がある私が助けてやるべきであるとは思うがあいにくチキンなもので。助けることはせずに歩き出した。もし忍足と話す機会があったらこのことを話そうとだけ思って。

歩き出す直前に財前と目があった気がするが話しかけられなかった。彼らみたいに私も色づいていたなら見つけてもらえただろうか。

今日も今日とて変わらない一日を過ごすのだ。

20140820

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