彼が似合うと言ったから私の好きな色は黄色だ。

「なんこれかわええやん!」
「せやね、かわいい」

確かに友人がかわいいと言った雑貨屋に並ぶバレッタは可愛かった。花をあしらったバレッタはピンクと白色の花で彩られたもの、ほかに黄色と水色の花のものもあり、三種類あった。

「なあ、おそろにせん?値段もあんま高くあらへんし!」

どう?と聞いてくる友人に財布を取り出してちらりと中身を確認する。問題ないことを確認して友人に承諾の意を示した。
いくらモノクロの世界に生きていたっておしゃれしたいと思う。少しでもカラフルな世界に近づけたらなんて思ってしまうのだ。

「うちピンクにするわ名無しは?」
「なんでもええし選んでよ」
「じゃあ黄色な!買い行こ!」

黄色か。まあ好きな色なんてないしなんでもいいやと友人に手渡されたそれをレジに持って行った。
明日それつけて写真とろな!と友人と別れて帰路へ着く。

鏡の前で買ってきたバレッタを取り出しつけて見た。悪くない。けれどやっぱり私はモノクロだ。私はそっとバレッタを外した。

次の日、私は友人に言われた通りバレッタをつけてきた。教室に入るとすでに友人は来ていた。ちゃんとつけて来たぞ、との報告をしようとそのまま友人の元まで行くと、私に気づいた友人はガバリと私に抱きついて来た。何事かと彼女をはがして話を聞くとつけて来いと言った張本人の癖に朝急いでてつけてくるのを忘れたとのことだ。

「ほんま堪忍な〜!いやでもほんとかわええなこれ!名無し似合ってるで!」
「褒めても許さへんよ」
「怒らんといて名無し〜!」

何だかんだお揃いのことに喜んでいたのは確かだった。まあちょっとだけだけど。意地悪してすがりつく友人を無視して鞄を置きに行こうと自分の席の方を向いた。

いた、彼が。

驚きすぎてなにも言葉が出てこなかったが、何度見ても千歳くんが私の席にいた。数秒してから、今日は朝からちゃんと来たんだとか、何で私の席に座ってるんだとか、ちゃんと挨拶しなきゃだとかが一気に頭の中に駆け巡った。とりあえず落ち着いて平常心で、鞄を置くだけだ。挨拶をして鞄を置くだけ。

席まで歩きながら呼吸を整える。

「おはよう」

机の脇に鞄をかけながら挨拶をする。
千歳くんと、隣の席の白石くんの視線がこちらに向いた。

「ああ、おはようさん。千歳、名字さん来たし席どいたれ」
「あはは、ええよ私どうせあっち戻るし」
「すまんね」
「今日は朝からおるんやね、授業もちゃんと出るんやで。まあた私が白石くんの愚痴を聞かなきゃアカンやろ」

緊張のせいでよく口が回る。さっさと荷物を置いて戻ればいいものの。変なこと言ってないよね。

「気が向いたら出るばい」
「アカン絶対こいつでえへんわ」
「あはは、頑張れ白石くん」

朝から千歳くんと会話できた、なんて少し浮ついた気持ちになる。そろそろ戻らないと私の心臓が爆発するかもしれないと思い、私はほなと挨拶をして友人の元に戻ろうとした。

「あ、」

すると千歳くんが一言だけ発した。何事だと首を傾げて彼をみる。ああ、かっこいい。本当に心臓が爆発するかも。

そんな私に追い打ちをかけるように千歳くんが自分の髪を指して言う。

「黄色、似合おうとるね」

にこっと笑った彼に私の目は釘付けだった。私の心臓爆発した。

「ありがと」

嬉しくて嬉しくて、にやけるのが止まらない。好きが溢れ出して止まらない。

彼が褒めてくれたこのバレッタが色づいた気がした。

今日も今日とて変わらない一日を過ごすはずだった。

20171229

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