「へえ、名字さん数学得意なんやな」
「あはは、そんなことないよ!」

笑って話せないのをごまかす。私の癖だ。
白石くんとは良好な関係を築くことができた。というかぶっちゃけ白石くんに利用されているだけである。
白石くんの隣、私じゃない方の女の子は積極的でよく白石くんに話しかけていた。しかし、白石くんは逆ナンしてくる女の子が苦手というように(この間そう話していた)しつこい女子はお断りだそうだ。そして話しかけられないチキンの私は無害だと気づいた白石くんは私を利用してその話しかけてくる女の子を避けようと考えたのだ。きっとそう。まあ、それで私は一向に構わないのだが。どうせモノクロな私が色づく彼らの役に立つなら嬉しいことである。

白石くんとは勉強の話から他愛のないことまでたくさんのことを話した。
それからたまに話に出てくる千歳くんにこっそり喜んでいた。普段接点のない分、こうして彼の話を聞けるのはとても嬉しい。白石くん様々である。

「そんな謙遜しなくてもええで」
「いやいや。私なんて、全然やで。頑張らなきゃアカンわ」
「向上心があるのはええことや」

「ほー、噂に聞く通りっちゃね」

びくり。白石くんと話していて突然聞こえた後ろからの声に驚いた。この独特の方言。言わずもがな、彼。振り返らないのもおかしいかと思い顔を声のした方へ顔を向けた。
千歳くんは後ろの入り口に立って片手を扉の上枠において寄りかかるようにしてこちらを見ていた。身長が高いからこそできる格好である。
千歳くんは私と目が合うと少し驚いたような顔をした。

「へえ、白石と仲がええのはお前さんだったか」
「なんやねん、千歳」
「白石に仲良い女の子が出来たっち聞いたたい見に来たばい」
「見世物やないんだけど」
「はは、すまん」

千歳くんはさらりと謝った。というか噂になっているんだ。白石くんは今まで特別仲の良い女子はいなかった。だけど今の私は明らかに今までの白石くんを考えると他の女子より仲が良くて良好な関係であることが誰の目から見てもとれる。あ、だからと言って白石くんが私のことを好きであると言うことではない。LOVEではなくLIKEだ。

「ちゅーか、千歳と知り合いなん?千歳の言い方的に知ってるみたいな感じやけど」
「あ、うん、顔見知り?」
「そんな感じたいね。名前なんやっけ?」
「お前この間言わんかったっけ。名字さんやで」
「あー、そうだった気がすったい」

夢から覚めたのと同じ感覚。確かに千歳くんとは顔見知りだけれど仲が良いわけではない。何時なんどき白石くんと千歳くんが私の話をしていたか知らないが、千歳くんにとって私は記憶に残すほどではなかったと言うことだ。名前を覚えていないということはそういうことだろう。

「あはは、そういえば名前言うとらんかったもんね、気にせんでええよ」

嘘つき。

私はずきんと痛む胸を隠して笑うことしか出来なかった。

今日も今日とて変わらない一日を過ごすのだ。

20150520

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