累の髪が揺れる。それは風によって揺れているわけではなく、人為的に揺らされている。二つに結ばれた髪は両の手で掴み、まるで幼子がおもちゃで遊ぶようにゆさゆさと揺らしていた。

「…っいい加減にしなさい!」
「うっわ、びっくりした〜」

累の怒声に、それをしていたレオは目を丸くさせて驚く。

「そんなに怒らなくてもいいじゃん!」
「怒るわよ!おもちゃじゃないのよ!」
「だって暇なんだよ〜!暇すぎて妄想たちが死んでいく〜」

レオはふてくされたように机に突っ伏した。
なぜこの二人が揃っているかというと、今から雑誌の取材があるからだ。ユニットリーダー対談企画とされた雑誌の取材で、今回はPinky Ribbonのリーダーである累とknigtsのリーダーであるレオの対談で、その取材のための楽屋に待機している。

「あんたはこういうのにでないと思ってたわ」
「うん、本来なら俺じゃなくて瀬名がやるべきなんだけどさ。ただルイと一緒って聞いて俺の妄想が刺激されちゃったから!じゃなかったら来てない」

レオはどうもknigtsに対して引け目を感じている。一度投げ出してしまったリーダーの座に座ることを拒否し続けているが、それでも今回この対談に臨んだということは、よほど累の事が気になっていたのだろう。

「まあ、瀬名とやるよりは楽だからいいわ」
「え、なに?セナと仲悪いの?」
「いや、なんかやりづらいのよね、あいつ。なんか過保護というか、なんというか」
「ふうん、」

レオは興味なさげにつぶやいた。自分から振っておきながらその返答はなんだと怒ろうとしたところ、こんこんと部屋の扉がなる。
ようやくスタッフの人が来たようだ。スタッフが来た事で、累は佇まいを整えはじめた。友人たちの前では素の自分でいるが、外ではPinky Ribbonの累だ。かわいい女の子としての振る舞いに切り替える。
そんな中、となりのレオもダラリとしていた体を起こして累と同じように佇まいを整え始めた。レオも累と同じように外では少しだけしっかりとしている。それは妹のるかにかっこいいところを見せたいだけのただのシスコンなのだが、累はそんな事は知らないので少しだけ驚いた。





「っあ〜!疲れた!」
「そうね。でも案外すんなり終わってよかったわ。もっと大変かと思った」

驚くほどに取材は簡単に終わった。
普段のレオを見ていれば、もっと脇道に逸れたり、意味不明な発言で全く対談にならないのではないかと危惧していた累だったが、案外彼はまじめに取材に応じており、トントン拍子で終わってしまった。

「それってどういう意味?」

大方累の言葉の意味はわかって聞いているのだろう、ムッとしながらレオは聞いた。

「アンタがもっと暴れると思ってた」
「うわ、正直に言う〜。しかも暴れるってなんだよ〜」
「普段の振る舞いを見直してみなさいよ」

レオは自覚しているのかそれ以上言い返さなかった。

「セナがさ、俺とルイのことを似てるって言ってたんだ」
「どこが?」
「そう、全然わかんなかった!」

レオは晴れやかに笑って言った。

「やっぱ似てないよな!」
「当たり前でしょ。アンタみたいなのと一緒にしないでよね」
「あ、でも顔は似てるかもな、女顔。俺も女装したら絶対似合うと思う」
「それ自分で言う?」
「絶対やらないけど!ああ、でもそれはそれでいい刺激になるかもしれない!」
「宗とか喜んでやるんじゃない?」
「え〜お前がやってくれよ。アイツはやだ」

真顔で返すレオに思わず累は笑う。

「そういうところは案外似てるんじゃない?」
「確かにお前もよくシュウと喧嘩してるしな」
「あと普段と仕事の顔が違うこともじゃない?」
「俺はお前ほど酷くないと思うけど」
「でも見違えるほどしっかりしてたわ。まあ笑い方とか考え方とかは月永のまんまだったけど」
「そりゃあ俺の天才的な頭は一つしかないからな!」

全く似ていない。けれど何故か似ている気がする。そんな二人の波長は妙に合うらしい。テンポよく続く会話は駅に着くまで続いた。

「今日はありがとな」
「…私、月永のこと、結構好きよ」

たぶん、レオに感化されてだろうが、累は珍しく好きという言葉を口にした。おそらく五奇人たちの誰も言われたことのない言葉だろう。それだけ、妙に波長が合ったのだろう。

累の言葉にレオは一瞬ポカンとする。しかしすぐに嬉しそうな笑顔を浮かべると、

「俺も!大好きだっ!」

同じように愛の言葉を伝えるのだった。



20190815
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