紅月がTrickstarに負けた。
会場がTrickstarの勝利に最高潮の盛り上がりを見せている中、私は呆然とその光景を見ていた。fine専属プロデューサーとして生徒会勢力と捉えられている私は、周りから見たら紅月の敗北にショックを受けているように見えるだろう。

でもこのとき私は、英智くんには申し訳ないけど、Trickstarとあんずちゃんに希望を持ってしまっていた。

もしかしたらえーちゃんを止めてくれるかもしれない、と。




ふるふると震えた携帯電話の相手は英智くんだった。ガーデンテラスにいるから迎えに来てとの連絡に慌てて最後の戸締りを他の人に任せて会場を飛び出す。
どうして私の周りにはこうも自由人ばかりなのだろうか。

急いで向かったガーデンテラスでは英智くんの他にも人がいた。それは今日、大勝利を収めたTrickstarとあんずちゃんの姿。
ちょうど話し終えたところだったのか、英智くんは私を視界に捉えると、こちらへと歩いてきた。

「もう、来るなら連絡してよね、心配でしょう」
「もうすぐ学校にも戻るしリハビリがてら見に来ただけだよ。面白いものか見れて来た甲斐があった」

楽しそうに話す英智くん。
いつかもこの笑顔を見た。
あれは、月永くんのときだっけか。
嫌な思い出を振り払うようにふるりと頭を振るう。

「迎えは?」
「もう呼んであるよ。ちょうど碧衣ちゃんも帰る頃かと思って。家まで送るよ」
「ありがと、じゃあお言葉に甘えて」

彼の隣に立って歩く。去年もこうして送ってもらうことがあったなと思いながら。

彼の制服姿を見るのは久しぶりだ。彼が制服に袖を通していた頃、私は、否私たちはこの学院に革命をもたらした。多くの生徒を犠牲にそれは成し遂げられたが、それが果たして正解だったのかわからない。

契約の終わりを持って私たちは離れ離れになった。私たちは英智くんにとっては使える駒だった。
気づいていたけど気づかないふりをしていた。
悲しかった、辛かった、忘れたかった。

それでも忘れられなかった。
幸せだったから、楽しかったから。

だから私はここに戻ってきた。払った犠牲を無駄にしないためにも、この学院のためになれることをしようと思った。英智くんがしたことは決して間違いではないと思う。だからこそ私はまた彼の隣で彼を支えていた。

でも、今日。
あんな太陽みたいな子たちを見てしまったら。
輝く可能性をここで潰してしまうのは、間違いのような気がして。

もしもその輝きを潰さずに、この学院に再び革命を起こせるなら。

私はそれに手を貸したいと思ってしまったんだ。


20170221

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