「ねえ、碧衣ちゃん見て、面白いね」

え〜ちゃんは楽しげに扉の前に貼られた紙を見ていた。目の壁には『この部屋から出る条件』という言葉と、そして、『部屋にいる相手とキスをする』という言葉が書かれた紙。え〜ちゃんはその紙を見て面白いと言っていた。どこが面白いのだと言いたい。端的に言って誘拐されているのだ。しかもえ〜ちゃんは大財閥の御曹司。外では大変なことになっているだろう。それを考えるとさっさと条件をクリアして部屋を出たいとは思うけれど。

「どうしようか、え〜ちゃん」
「そうだね、僕は別に出なくてもいいと思ってるし、もし出たいなら君から僕にキスするしかないみたいだ」

私がえ〜ちゃんに問いかけると、え〜ちゃんは朗らかに笑って見せた。
この脅しにも近い言い方はとてもえ〜ちゃんらしい。

「さあ?どうする、碧衣ちゃん」

え〜ちゃん、私はあの時から自分で自分の道を選ぶことにしたんだよ。私はえ〜ちゃんの駒じゃないんだから。
私はふうと一息吐いて、それからにっこり笑った。そしてえ〜ちゃんに近づく。
え〜ちゃんは少し驚いているようだったけれど決して微笑みは崩さず私を見ていた。

「おや、キスしてくれるのかい?」
「うん、そうだよ」

私はえ〜ちゃんの肩に手を置いて、それから迷うことなくえ〜ちゃんの頬に唇を寄せた。
今度はちゃんと驚いた顔をしたえ〜ちゃんの顔にしたり顔をすると、私の後ろで扉の鍵が外れる音がした。


201911111

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