「わ〜、最近流行りのやつですね〜」

気の抜けるようなつーちゃんの声で緊急事態だというのに緊張感が和らぐ。危機感を感じで身を硬くしていた私だったが、あまりにも楽観的なつーちゃんの声に肩の力を抜いた。

目の壁には『この部屋から出る条件』という言葉と、そして、『部屋にいる相手とキスをする』という言葉が書かれた紙。
それ以外、この部屋の中にあるものといったら何もなくて、紙の隣にある唯一の扉は、ドアノブをひねるとガチャガチャと音が鳴るだけで、開くことはなかった。

と、いうことはだ。たぶん、信じたくないけど、おそらく、紙に書かれた条件をクリアしなければこの部屋から出る言葉できないのだろう。

「つーちゃん、私とキスできる?」
「えっ、いやいや僕なんかじゃ嫌でしょう?」

嫌かどうかできかれたら嫌ではないと答える。赤の他人ならまだしもつーちゃんだし、つーちゃんじゃなくてもfineのみんなだったらまあ仕方ないかなと思う。妥協して。

「つーちゃんが嫌じゃなければ大丈夫だよ」
「近頃の女の子はそうやってホイホイチューしちゃうんですか!?怖い!?」
「だってここから出たいし」

つーちゃんがぎゃあぎゃあ騒ぐから思わず冷静になってしまう。早く出ないとひーくんがうるさいと思うし、なーくんもどこに行ってしまうかわからない。プロデューサー(お世話係)としてそれは困る。

さっさと済ませようと私は未だにうるさいつーちゃんの洋服を引っ張って彼の口と私の口を近づけた時だった。


ドッカーーーーーン!!!!


ものすごい轟音が部屋に響いたと思ったら私たちのすぐ横の壁が崩れた。

「おやあ、つむぎくん。碧衣に何をしているのかな?」
「大丈夫、碧衣?」

壁にポッカリと空いた穴から風が吹いて私たちの髪を揺らした。

20190513

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