リボステに感化された復活夢

長めです。





突然違う世界に飛ばされた、なんて経験あるだろうか。ないだろうな。
俺はある。現在進行形だ。
どうやら俺は本当に、極々たまに、偶然に、世界と世界が一瞬繋がったその瞬間に他の世界に引き寄せられる性質をしているらしい。例えれば落とし穴に落ちるとかそんな感じでストンといってしまうらしいのだ。

信じられないことかもしれないが、そんなことを夢で聞いて、起きたら知らない部屋だったらそれなりに信じられるよな。
現在進行系で動揺している俺はそんなことを思いながら呆然と天井を見上げていた状態から体を起こした。
ぐるりと見回すとやはり知らない部屋だ。ただ、自分の部屋であると言われれば、確かに自分の使いそうなものがところかしこに溢れているし、そうであると言えてしまう。

混乱する頭をどうにか冷静にさせるために、俗に言うトリップをしたと言う事実をを丸ごと飲み込んで、俺は行動を開始した。
とりあえず部屋を出ると下の階へとつながる階段を降りる。元の家はマンションだったのにこの家は一戸建てのようだ。落ち着けと心の中で唱えながらゆっくりと階段を降りる。一階について、居間に繋がっているであろう扉を見つけた。そおっと扉を開けると、中ではダイニングにいる母親がテレビのニュースを見ながらコーヒーを飲んでいるのが見えた。この母は確かに俺のことを生んでくれた母で、紛れもなく俺の母であった。間違いない。いつも俺が起きるとこうしてコーヒー片手にニュースを見ていたのだから。違うとすれば、場所が居間兼ダイニングの丸テーブルではなく、居間の机とは別にあるダイニングだったことぐらいだ。

「あら、やっと起きたの」
「ああ、おはよう」
「転校初日から遅刻するんじゃないかと思ったわ。さっさと準備しなさい」

母親の言葉で俺が今日どこかの学校へ転校することがわかった。

「俺ってどこに転校するんだっけ」
「は?何言ってるの?黒曜中でしょ?」
「いや、ちょっと寝ぼけてた」

誤魔化してはみたけれど母親に怪訝な顔で見られた。
とりあえず情報は得られたので速やかに自分の部屋へと退散する。
すぐさま部屋の机の上にある俺のものであろうスマホで黒曜中について調べてみた。ついでにぐーぐる先生に現在地と黒曜中の位置関係を検索してもらう。なるほど、徒歩15分というところだろう。
棚の中を漁ると深い緑色の学ランが出てきた。珍しい制服だなあと思いつつ袖を通す。ぴったりだ。まあ俺の何だから当たり前か。
それから探り探りで見つけた洗面所で顔を洗った。鏡に映った顔はちゃんと俺のもので少し安心した。

その日はとりあえず流れに身を任せて黒曜中の三年生の転校生として過ごした。前と同じ学年で、授業も同じところから再開だったために問題なく過ごせた。それに隣の席の六道くんがとても良くしてくれたから穏やかに一日が終わった。

これが夢で起きたら元に戻ってたりしないかなあ、とか思いながら布団に入って寝たが、次の日起きて見慣れない天井で絶望した。

どうやら夢ではないらしいのだ。

その現実をようやく受け止めた俺は、かなりショックを受けた。母親に心配されるくらいには顔に出ていたらしい。学校に行ったら隣の席の六道くんにも心配された。とりあえず、初めての転校で緊張しているせいか疲れたと適当な言い訳をしておいた。

今日も夢だといいのになと思って布団に入った。
次の日起きてみると、ほんの少しだけ見慣れた天井が見えた。

これを繰り返していると、絶望というのも少しずつ薄れてきて、今ある事実を受け入れられるようになってきた。

そして俺がここに来て1週間が経った日のことだ。

また夢を見た。
夢は言った。
次に俺の世界とこの世界が繋がるのはいつだかわからない。けれどもし繋がることがあれば、体は元の世界の方に引かれるはずであるから、自然と戻れるだろうと。
それから、今いる世界が、俺のいた世界で漫画として存在するということを教えてくれた。

目がさめると次の日だった。
もはや見慣れ始めた天井を見上げて俺は肩の力を抜いた。
戻れる、のか。
その事実に酷く安心した。

体を起こすと部屋の中の変化に気づく。本棚の中に数十冊の漫画が増えていたのだ。おそらくこれが夢が言っていたこの世界の漫画なのだろう。
適当な一冊手にとって中身を見てみる。ゴリゴリの戦闘シーンが描かれていて、これがこの世界で本当に起きるのだとしたら、巻き込まれたくないなと思う内容だった。
とりあえず今読み始めたら学校に遅刻するので帰ってきてから読もうと思う。

この時俺は気づいていなかった。
すでに俺はこの漫画の物語に巻き込まれているということを。
すでに友人と呼べるほどに仲良くなった彼が、漫画の背表紙にいたことを。

帰宅して一番に俺は漫画へと手をつけた。読んでいくと最初はギャグ漫画のようである。なるほど主人公は彼だな。舞台は黒曜中ではなく並盛中。うちの学校じゃなくてよかった。
少し安堵しながら読み進めていくと、嫌なものを見てしまった。
次の巻を読もうと棚から目的の巻をとりだしたとき。次の巻の表紙が見えてしまった。

「嘘だろ六道くんじゃん…」

舞台が並盛中であるから油断していたというのに、そこに写っているのは紛れもなく俺の友人となった六道くんで。ひやりと背筋が凍る。急いで手にする巻を読み進めていると、ギャグ漫画から一転してシリアスめな話が展開され始めた。それには紛れもなく黒曜中の制服を着た俺の知るキャラクターが描かれていて。まさかの六道くんが主人公の敵で、ボスだった。まじかよ。

絶対に関わらないようにしようと思っていたのに、このままだと巻き込まれるような気がしてならない。だからと言って急に距離を置くのも不審だろう。悩んだ結果現状維持で行くことにした。

しかし俺はこの結果を後悔することになる。






少しでも気配を薄くして顔を覚えられないようにするためのマスクの下で俺は顔を真っ青にさせていた。なぜって六道くんに彼の部下である槍を突きつけられているからである。

「なに?危ないよ」
「ふむ、本当に何も知らないんですか?」
「何を?」
「僕について」

選定するような六道くんの鋭い視線が俺に刺さる。
どうしてこうなった。
俺は何もしていないと断言する。ただ普通に登校して普通に授業を受けて普通に帰ろうとしただけだった。

「薊くん、少しよろしいですか?」
「なに?」
「これからお暇でしたら付き合っていただきたいところがあって」
「…いや、今日は家の手伝いしなきゃいけなくて」

急に六道くんに引き止められて嫌な予感がした俺は適当に言い訳つけてそのまま帰ろうとした。
しかしその腕をがしりと取られる。
六道くんはじっと俺を見てきた。そういえば漫画の中でマインドコントロールをかけていなかったっけと即時に思い出した俺は、自然な動作で目をそらした。

「そんなに時間かからない?」
「ええ、大丈夫です」

にこりと笑った六道くんからは逃げられないと思って現在に至る。

「もともと顔色に出ないタイプなのか、それともこういうことに慣れているのか。できれば前者でいてほしいものです」

間違いなく前者であるから心配しないでほしい。

「いやいやこれでも十分驚いてるよ?背中とか冷や汗びっしょりよ」
「そうは見えませんが」
「六道くんが言う通り顔には出ないんだよ。一緒にいたんだから知ってるでしょ」
「確かに一理あります。しかし君は、怪しいんですよ。僕たちが動きだそうとしたところで転校してくるなんて疑っても仕方ないですよね」

知らんがな。
理屈としてはわからないでもないが、疑われたこっちとしてはたまったもんじゃない。だって一般人だし。

「接触してみれば一般人にしか見えませんでしたが…念には念を入れて、と思ってこうして話してみてもやっぱりこちら側の人間とは思えませんね」
「だって俺一般人だし」
「どのみちここまで連れてきてしまいましたし、大人しく僕の駒となってください」
「駒って。そんなことしなくても六道くんの頼みならある程度は聞くけど。友達だし」

まあ危ないことはできないけれど、一般人の力なんてたかが知れてるから六道くんも変なこと要求してこないと思うし。別にマフィアに関係しようが、俺はどうせ元の世界に帰る身だ。せっかく仲良くしてくれた彼に恩返しじゃないけれど、お手伝いくらいしても悪くないと思う。

「面白いことを言いますねえ。君はその友人である僕に殺されそうだったんですよ?」
「殺すんだったらもっと早々に殺せるのに、そうしないから六道くんは優しいなあって思っていたよ」

こんな一般人のことなんてすぐ殺せるのに、それをしないあたり殺すつもりはないのかなあと思っていた。というか本当に殺そうとしてたら悲しいなあ。俺は友達だと思ってるし。

「クッハハハ!君は面白いことを言う」

何がツボに入ったんだか、六道くんは上機嫌に笑い出した。
なに、怖いんだけど。

「いいでしょう。特別に見逃してあげます。君が友人としている間は」

つまり俺が裏切った瞬間殺すってわけですね。裏切ることはないので殺されるは回避でFAか?やったぜ。

「うい〜骸さんただいま〜」
「…ただいま」

ちょうど話に折り合いがついたところで、2つの声が聞こえた。
この声は城島くんと柿本くんだな。一方的に知っているだけであって面識はない。俺が仲が良いのは六道くんだけだ。

「は?お前何でここにいるびょん」

城島くんは俺を見つけるなり警戒して犬歯を見せながら唸る。柿本くんも警戒するような視線を向けてきた。

「彼は僕が呼んだんですよ」
「それで、彼は黒だったんですか?」
「今の所白ですよ。まあ要注意ってところですかね」
「みたいなんでよろしく、っつーか怪我してんね」

柿本くんをよく見ると頬にほんの少しのかすり傷。
城島くんも右手が赤くなっていた。
あれこれもしかして黒曜編もう始まってるのかなあ。

「六道くん、救急箱とかないの?」
「あいにく用意していませんね」

これから怪我する予定なのに救急箱ないの?まじ?

「こんなんほっとけば治るってーの」
「だって痛そう」

城島くんも柿本くんも気にしたようではない、それくらい怪我が多くこんなのは本当にかすり傷なのだろう。
まあ今はなにも持っていないからどうしようもないけど、今後は絆創膏とか湿布とか常備しておこう。

「そういえば用事があったのでは?」
「呼び止めたのは六道くんのくせに」

六道くんはわかりやすく話を変える。これから大事な話をするから帰れと無言の圧力を感じた。
察しのいい俺は大人しく帰ることにする。

「じゃあ、また明日」
「ええ、また」

帰り道、思い出したけれど六道くんたちとは黒曜編が終わったらしばらく会えなくなるはずだ。
………あと何日また明日と言えるのだろうか。



あれから数日は何事もなかったかのように過ごしていたが、急にパッタリと六道くんは学校に来なくなった。おそらく、黒曜編が始まったんだと思う。
六道くんと会わなくなって数日経った放課後、帰路をのんびり歩いていると、見知った二人組とばったりあった。この世界に来て知り合いなんて黒曜の人しかいないわけで、二人組といえばまあ、高確率で城島くんと柿本くんと想像できるだろう。

「うげ〜、なんれいるびょん」
「帰り道だし。城島くんたちも帰り?」

何の、とは言わないけれど。怪我をしているようなので十中八九並盛生狩りをしてきたところだろう。

「お前には関係ないびょん」
「黒曜ヘルシーランドに帰るんでしょ?俺も六道くんに挨拶しに行こうかなって思って」

今決めたけど。

「ていうかまた怪我してんね。救急箱持ってるから着いたら絆創膏あげる」
「は?本当についてくるつもりらんか?」
「もちのろん」

うげーと嫌そうな顔をする城島くん。そんな俺の相手をしてくれる優しい城島くんに対して、柿本くんは興味がないのかスタスタと歩き出していた。

「あ、置いてくんらねえよ、柿ピー!」

気づいた城島はそれを追いかける。
結局あの二人の方が足が速くて、気がつけば遠くの方にいたけれど、まあいいかと一人でゆっくりと黒曜ヘルシーランドへ向かった。

で、着いたはいいものの、六道くんのいるあの部屋の場所がわからない。こないだは緊張しすぎて道を覚えている余裕もなかったからなあ。
とりあえず適当に歩けば見つかるかあと思って、足を踏み入れると、向こうから見知った顔がやってくる。
ふて腐れたような顔をした彼は、

「骸さんが迎えに行けっていうから仕方なく来ただけらかんな!」

と、一言吠えると着いてこいとばかりに歩き出した。

「助かったよ、今日道を覚えてあとは一人で来れるようにする」
「来なくていいびょん!」

ぷんすこと城島くんは怒り続ける。もう少し優しくしてくれたっていいのになあ。

彼の後をついていくと、あの時の部屋までたどり着いた。道順は覚えた、大丈夫だ。

「よ、」
「お元気そうですね」
「うんまあ、六道くんも元気そうで何より」

最近六道くんは学校へと顔を出すことが減ったので、なんだか久々に会う気がした。実際今日は前回会ってから三日ほど空いただけなのだが、毎日会っていたものが会えなくなると寂しく感じてしまうものである。

俺は意気揚々と鞄の中から小さなポーチを取り出した。包帯やら絆創膏やら消毒液やら。必要そうなものを詰めた救急箱的なポーチは、この前六道くんに誘拐されて帰ってからすぐに用意した。
案の定すぐに使う出番がきて、なんとなく張り切ってしまい、それを見た二人は気持ち悪いものを見たというような微妙な顔をしていた。

「え、なに?」
「君の笑顔が珍しかっただけ」
「俺笑ってた?すごいレアだね」
「笑顔というか楽しそうだった」

俺の鋼の表情筋はどうやら今回も動かなかったらしい。
まあ、理由が子供っぽいので、これ以上言われないように適当に相槌しておく。恥ずかしいなあ。

「そんなことより怪我したとこ出して。消毒してばんそーこ、はったげる」
「いらないぴょん!」
「そんなこと言わないでよ」

せっかく準備したのに悲しいじゃないか。城島くんは警戒して近づいてこなかったけれど、柿本くんは疲れたのかその辺にあった椅子に座ったのでこれ幸いと俺は見える範囲に消毒液を塗って絆創膏をつけた。何も言われなかったので無事に治療完了である。
次に城島くんと思ったが、視線を向けたら思いっきり睨まれたので諦めることにする。悲しい。

「…君は何も聞かないのですね」
「うん、まあ、聞いて欲しいなら聞くけど」
「いえ。気にならないのですか?」

気にならないも何も知ってるからなあ。とは言えないのでない頭をひねり出して理由を考える。

「知らない方がいいんじゃないかなと思って」
「賢明な判断ですね」

当たり前だけどマフィアなんて普通に暮らしていたら関わりないからね。
漫画を見ている限り、この世界線ではマフィアと一般人が日常生活で関わってもおかしくはない。ボンゴレファミリーの本拠地のイタリアなんかではそうだろう。マフィアは民を守ってくれるものである。
しかし、少なくともこの日本ではあまり目立った動きはしていないらしい。まだ少ししか過ごしていないから確かなことは言えないが、一度も耳にしたことはない。あと、できれば関わりたくないからね。まあ六道くんと友達の時点でどの口が言うって感じだけど。

「様子見に来ただけだから帰るわ」
「おや、残念です」
「え、いてもいいの?邪魔じゃない?」
「君一人くらいで計画に支障がでるくらい柔じゃありませんよ。それに…もしかしたら最後かもしれませんからね」

どうやら城島くんや柿本くんによる並盛生の襲撃はランキング上位にまで来ているらしい。
つまり六道くんにはしばらく会えなくなる。いや、もしかしたらもう会えなくなるかもしれない。俺は別にボンゴレ側の人間とつながりがあるわけではないから、六道くんのその後を追うこともできない。きっともうさよならである。

「んー、いーや。長居するだけ会えなくなった時に寂しくなりそうだし」

それに知ってて助けられないことに耐えられなくなりそうだ。

「残念です」

骸は少し肩をすくめてみせた。

「しばらくここに近づかないことをお勧めします」
「りょーかい。じゃ、またね」

またなんて来るかわからないけれど。

「ええ。ではまた」

六道くんがまたと返してくれたことが嬉しかった。



行き場がないのでゴミ箱で。





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