「この波に乗って彼女できねえかな〜」

学校祭シーズン、なぜだかわからないけどカップルが異様に増える。その波に乗り切れていない男子たちから漏れる言葉に、神楽はひどく呆れた。

「彼女とか言って、実際ヤりたいだけの奴らがよく言うネ」
「同感でさァ」

一番窓側の席で男子たちのやりとりを見ていた神楽とその真向かいに座る総悟。前は隣同士だったが今度は前後になり、神楽が怪訝な顔をしたのは記憶に新しい。ひとりごとのように呟いたのに返事がきた上的外れな言葉に、神楽はしばし驚いたような顔をした。

「意外アル、お前もヤりたいだけの奴だと思ってたヨ」
「てめェ、犯しやすぜィ」

なんだ、やっぱヤりたいだけなんじゃんヨ、と返したようにケロッと言う神楽。総悟は呆れたようにため息をついた。

「あのなあ、ヤりたいのは確かだけど俺は」
「お、素直なやつネ」

途中口を挟んできた神楽を真っ直ぐに見つめながら。

「好きな女以外に発情しないんでさァ」

せめてもの意思表示、のつもりだった。
しかし、目の前の神楽は瞬間フリーズし、変なものでも見るみたいな目になった。

「説得力が無さ過ぎてびっくりしたアル」
「てめェ……」

突っかかろうとしたところで神楽はひょいと席を立った。少し驚きながら視線で神楽を追うと、至上最高に赤くなった顔があった。

「おま……」
「そんな真顔で私に向かって言うな」

それだけ言い残すと逃げるように教室を出て行った神楽。残された総悟はしばらくひとりで呆気にとられ、それから弾けたように教室を飛び出していった。



(とりあえず一言目は"ヤらせてください"だな)


2010.09.23


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