たとえば、なんて言葉を言えるような世の中ではないけれど。
それでもときどき、ありもしない未来を想像したりする。
いつだってそこにはお前がいた。








「っん……」
「…かすが、」

付き合いの長い彼女だが、こんな彼女は知る由がなかった。
綺麗な顔が淫らに歪んで、酷く熱くて湿っぽくて、柔らかい。
濡れた唇から洩れる息と、声と、わずかに開かれた目が揺れるのを、俺はたまらない気持で眺めていた。

「身体、ふにゃふにゃじゃん。そんないい?」
「うる…さいっ、離せ」
「またまた〜、そんなウソ、つかないでよっ」

睨みをきかせようとしているようだったが、どうにも、その目で見られたところで加虐心が擽られるだけだった。
俺の腕の中で蕩けきってしまった身体が縋るように寄りかかってくる。それがどうにもうれしいらしい。減らず口を叩く余裕がある唇を一舐めすると、彼女の身体が可愛そうなほどに跳ねた。

「んん」
「…何から何まで、ほんと最高だよね、オマエ」
「っ、ヤダ、へんなとこ…触るなっ!」

首筋を吸いながらくびれた腰を撫で、徐々に上へと侵略していく。柔らかい胸の下を、その形をなぞるように何度も辿ると、彼女の腕がそれを止めさせようとする。しかし、蕩けたからだがいくら反抗しようと、その力など普段の彼女の僅かでもない。か弱い、か弱い女のような力だった。

「俺さあ、結構やばいんだよね」
「…?な、に」
「最後まで、って、どこまでだと思う?」

問うたのか否か、それは自分でもわからなかった。ただ口調だけは、それがただの決定を告げるものだと感じていた。彼女の息がつまる音がした。なおも白い首に舌を這わせるが、彼女の身体は見る見るうちに硬くなっていく。ああ、せっかくほぐれていたのに。惜しみながらも、再びその身体をほぐしにかかる。

「や、やめ」
「ここまできて、それはないんじゃない?」

舌が下りていく。細い首から浮き出た鎖骨、そして深い谷間から胸の頂へ。密着性の高い服の上から舐めるように、吸うように辿っていく。時折あがる甘い声と吐息が、身体の中心に熱を集める。

「ん……、なあ、ここ、直接舐めたいんだけど」
「っな!!なに言って」
「まあ、許可は必要ないけど」

そのあとに続いた彼女の焦った声は、途中で高い声になる。露わになる、初めて見る彼女の姿。体の奥から湧き上がる熱に浮かされて、まだ知らない彼女の素肌を暴き、含み、その味を知る。
まだ知らない彼女の声と、顔と、肌の熱さを知る。
この紛れも無い現実が、すぐにこの手からすり抜けるものだとわかっている。それでも。
触れている今が永遠に続けと、柄にもなく思ってしまった。



繋げた体を明日、この手で刃で、貫こうとも。
その手で刃で、貫かれようとも。
この手には確かに、お前がいたという熱は残るはずだから。


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