「独りは、寂しいです」

そう言って君は綺麗な目を揺らした。だんだんと透けていくから、君がどんな顔をしているのかわからなくなっていく。名前を呼ぶと君はうっすらと姿を見せて小さく返事をした。

「君ともっと、話をしたい」

その言葉に、君は花が咲くみたいに笑った。



「…ジ、ンくん?ジンくん!」

ああ、泣かないで、ユノハ。君の涙はもう二度と見たくないんだ。そう声にしたいのにもう声が出ない。必死に伸ばした指が君の唇に触れた。柔らかくて温かくて、これが合体なのかなって思った。

「ジンくんッ」

手の中に収まっていた通信機のボタンを押すと、どうやらそれが僕の最後の力だったようで床に落としてしまった。それでも通信機は僕が望んだ役目を果たす。流れ始めた僕の声が、信じられないくらい柔らかく思えた。

「ユノハ。君と出会えた奇跡に、もう息が止まりそうだよ。繋いだその手に、少し強くなれる気がする、だから」

だから、ねえ、ユノハ。明日も、未来も、ただどうしようもなく好きだよ。もしまた出会えたなら、その時はまたその綺麗な目で僕を見つめて、どうか笑って。


出会えた奇跡にもう息が止まりそうだよ


2012.03.30

▼タイトル
荒野のヒース/AKINO より


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