「あの会長」
「…ハリー、と言ったはずなんだがね」
「あ」
思いをわかり合ってもなおハリーに「ボディーガード」として接してしまうキティがハリーにはもどかしかった。なかなか名前を呼ばれない、そんなことが気になる自分を可笑しく思った。
「すみません、なんか慣れなくて」
「あと出来れば敬語はやめてくれないか」
「…慣れなくて」
眉を八の字に曲げて困るキティを見てハリーは笑う。そんなハリーを見てキティは恥ずかしそうに頬を染めた。言動ひとつひとつに反応を見せるキティが、ハリーは愛しくて愛しくて仕方なかった。
「まあ、そんな反応が楽しめるんだから今はまだ許そう」
「…ハリーは私を困らせる天才です」
「君こそ」
「はい?」
ハリーの返した言葉の意味がわからずキティは彼を見上げるも、瞬間掠めるようなキスで誤魔化されてしまった。微笑んだハリーの顔を間近に、キティは余計顔を赤く染め上げ恨めしそうに彼の名を呼んだ。呆れるほどに恋をしよう
2012.03.26
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