綺麗な女だなあって思った。
あの時はすぐに否定したけど、やっぱりお前以上に綺麗な女はいなかった。
「蒼って…犬?」
「…は?」
その綺麗な女は少々、いやかなりマイペースなところがあって親しい人間は振り回されやすい。漏れなく俺もその被害に遭っているわけで、例えを言うなら今のこの状況。
「いやっ、だって女の匂いがするって言ったから」
「そんなの普通にわかるだろ」
「でも僕、女の子みたいに香水とかつけてない」
「そんな化学的な匂いじゃねーよ」
「じゃあ何?」
少しだけ困ったような顔をして窺ってくるその仕草がまず女のものなのに。湧き上がる欲望に静かに蓋をして対峙すると、名前のように真っ白な頬が淡く紅潮した。また湧き上がる、欲望。
「男を誘う匂い」
そう、たとえば。
「この唇から」
触れるか触れないか、そのギリギリの空気を指先で撫でる。
「あと首筋とか」
触れたい。
「鎖骨とか」
味わいたい。
「ここ……とか」
犯したい。
「……っ!蒼!」
布越しにさらりと核心を擦った瞬間俺の名前を呼んだお前は、真っ赤な顔で睨み付けてきた。馬鹿な奴。そんな反応されても、こっちはただ止まらなくなるだけだ。
「なに?」
ただ掠めるだけだった指で、今度は強く核心を突く。ビクンと跳ねた体全体から誘うような匂いが漂う。
「やっ、蒼!やめ…っ」
「なんで?気持ち良いんだろ?」
「そ!んなこと…っんん!?」
塞いだ唇からも女独特の甘い味がした。柔らかい舌を吸いとって、絡めて、何度も何度も舐めあげて。そうしてお前の瞳が蕩ける頃に、俺は理性を捨ててお前を犯す。
「女の、匂い」
ガチャッと外したらベルトを捨て去って下着ごとズホンを下ろす。無意味に近い抵抗を軽くあしらって、細い太股の間に顔を埋めて、嫌がるお前の声を聴きながら。
「っああ!やあっ、ん、蒼!」
溢れ出す蜜を一滴足りともこぼさぬように、吸い付いて舌で掬って、口内でぐちゅぐちゃに犯す。味わう。もっと、辱しめたい。
「やだぁ!そ、う!あっ、ああ!」
俺の髪をくしゃりと乱した指先。痙攣する脚。甘い誘惑。いつだって限り無く俺を惑わし翻弄するお前に、俺は限り無い想いと快楽を捧げることにする。
限り無く甘やかな世界へ
2011.10.03
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