鎖が千切れた。儚い貴女の身体を押し倒して、僕は、大罪を犯した。隠し守ってきたすべてを壊してまでも、貴女が欲しかった。一心に。

意識を手放した彼女の、その白い頬を伝う涙が僕のなけなしの良心に深傷を負わせた。それが、小さな救いだった。僕の独占欲をあからさまに示す幾つもの鬱血痕が、性懲りもなくまたこの身体に熱を点す。僕が濡らした肌がまた更に。重力を言い訳に彼女の肌に吸い落ちて、ゆっくりと、確かめるように舌を這わせた。不思議な程に甘くて、論理的には説明できないそれはまるで僕の彼女に対する想いのようだ。肩から鎖骨、胸の頂には少し吸い付いて。そのまま胸の間から臍まで一直線に、我ながら厭らしい速度でまた彼女の肌を犯していく。ああ、堪らない。胸が張り裂けそうだ。彼女が意識を手放している分、罪の意識はその重さを増している。なのに僕は酷く興奮している。篭る熱を吐息として吐き出すと、肌を撫でた感覚が擽ったかったのか彼女は小さな声をあげた。

「ふ…、ぁ」
「しえみさん」
「あ、雪…ちゃ?」

長い睫毛の下から覗く若草色の瞳。徐々に見開かれていくそれと同時に、彼女の顔も赤く染まっていった。唇が何かを言おうとしていたが、言わせる前に塞いでやる。

「んん、ゆ、き」

途切れ、途切れに、僕の名前を苦しそうに漏らした彼女は知らない。その行為が僕を陥れているのだと。心ではブレーキをきかせているつもりなのに、身体はまるでいうことをきかない。むしろアクセルを踏んで加速して。彼女の儚い身体を滅茶苦茶に揺さぶる。僕はなんて、非道で自分勝手で理性のない人間なんだろう。彼女に関わると僕は、生まれ変わったみたいに違う気持ちに満ち溢れるんだ。

「ゆき、ちやっ…!ん、ダメ!」
「聞きません、黙って」
「っも、う」

そしてこんな風に我が儘になって、彼女の心の隙間を見つけて入り込んで。僕はまた、償えない罪を重ねていくんだ。





2011.08.01 Aコース 様


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