「雪ちゃんはね、わたしの憧れなんだあ」
しえみは笑って言った。その笑顔にどんな意味があるのか、俺は知りたいと思った。
「憧れ…?頭が良いからか?」
「それもあるけど、それだけじゃないよ。」
ひどく柔らかい声が言葉の続き、俺の質問に対する答えを紡ぐ。
「雪ちゃんはいつも優しくて、強くて、すごく真っ直ぐで。そんな雪ちゃんをわたしはすごくすごく尊敬する」
「尊敬、か」
その声音は、本当に尊敬を語るものなのか。その表情は、雰囲気は、眼差しは。あまりに優しくアイツを語るしえみは、いつにも増して可愛く輝いて見えた。沸々と、俺の核心で焼けるような想いが起こる。この想いの原因としえみがアイツに向ける想いが、重ならないで欲しい。ずっと、気付かないでいて欲しい。
「俺もアイツのこと、スゲーって思う」
「うん。それってすごく、素敵だね!」
「…おう」
ずっと、憧れのままでいて欲しいって、俺は願って願って止まないんだ。
どうか憧れのままで
2011.07.24
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