※学パロ 幼馴染み設定


いつだって人一人分の距離をおいて、重ならない影を追い歩いていたんだ。

「ねえ」

君の声が僕と君の歩みを止めた。君の影は俯いているようで、僕はその影を見つめたまま答える。

「なに?」

僕の声に君はしばらくの間答えなかった。でも、僕は待った。待って、待って、そうして君が言った言葉はたったひとこと。

「繋ごう?」

何を、なんて聞く意味が僕にはなかった。だから「うん」とだけ言って君の右手を握った。幼かったあの頃とは違う大きさや柔らかさ、でも同じ温かさ。包み込むみたいに出来るだけ優しく握り続けたら君がくすっと笑った。気がした。らしくもなく気恥ずかしさを感じてしまって君の方に目を向けられない僕。代わりにこの目に映ったのは、少しだけ縮まった距離の間で繋がった僕らの影。またらしくもなく顔がにやけてしまって、ああ幸せかもしれないだなんて思った。

やさしい影
赤い顔まで映さないでくれてありがとう。


2011.04.22


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