大親友のキラに双子の妹がいると知ったのはつい最近のことだった。16歳の春、その妹が住むオーブの高校に俺は入学した(もちろんキラも一緒に)。そこでどんな巡り合わせだったのか、俺とキラ、そしてキラの妹は同じ1年A組になった。

キラの妹はもちろん見たことがない。キラ曰く明るく真っ直ぐな可愛い子だという。あまりに抽象的で曖昧にしか返事をしなかったが、その抽象的な表現がぴったりと当てはまるような少女が、俺たちが教室に入るや否やこちらめがけて駆けてきた。

「キラ!」

弾むようなハスキーボイスが親友の名を呼んだ。たちまちキラは少女を抱き締め(ここ教室だぞ、キラ)その名を呼ぶ。

「カガリ!」

何度か聞いたことのあるその名はカガリ・ヒビキ。キラの、キラ・ヒビキの大切な妹の名前。
周りの生徒の目など気にもしない様子で抱き締め合ったふたりはゆっくりと微笑む。ふいに少女の目が俺に向けられた。そのまま俺の目の前まで来てまじまじと見つめられる(わ、)。近くで見ると瞳は髪と同じ金色だった。淡く透き通るその色に終始見惚れていると、細い首が小さく傾げられた。

「もしかして、アスラン?」
「え、」

よく知らない声に名前を呼ばれてドキッとする。「う、うん」と情けなく出た声に少女はたちまち笑顔になった。

「やっぱり!私はカガリ!キラの双子の妹だ。」
「ああ、キラから聞いてるよ。俺はアスラン、アスラン・ザラ」
「私もキラから聞いてたぞ、よろしくなアスラン!」

満面の笑みで手を差し伸ばされ多少戸惑ったが、ここは平静を装いその手を取る。小さく柔らかいそれに少しだけ驚いて(今まで女性の手を握る機会は無かったに等しい)、つられて口元が緩んだ。

「よろしく、カガリ」

呼んだ名前に、顔が熱くなるようだった。嬉しそうに笑った彼女に、今思えばあの時から俺は恋をしていたんだと思う。


恋と知らずに恋をした。


2010.10.23


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