君が教えてくれた。誰かに優しくするっていうことはとても贅沢なことで、誰かに優しくされるっていうことはとても幸せなことだと。恋する切なさ、嬉しさ、愛すること、愛されること。まるで知らなかった僕に、君はひとつひとつ刻み付けるように教えてくれたんだ。

「んん〜っ!そ、そ…じさっ」

塞いだ唇からは隙間が生まれるごとに声が漏れた。薄く目を開けば真っ赤な顔をした君が間近に、いつまでたっても初な反応をしてくれる。胸をどんどんと叩かれて渋々唇を離せば、君は必死に酸素を求めた。

「呼吸しなよ」
「そ、そんなこと言われても…!」

わからないんです、と頬を膨らませて、ただでさえ赤い顔を更に赤く染めて君は言う。反則、その顔。意識する前に口をついた言葉を聞いた君は不思議そうに僕を見上げた。その目遣いも反則だ。身体は瞬く間に熱をもって君を求め始めた。手を伸ばしその身体を引き寄せ、先程の口付けで少し濡れた唇に吸い付いた。瞬間君は身体を強張らせて、切ない声をあげる。

「っんぅ」
「息、して」

舌を奪う前にそう忠告すると、君は必死に呼吸をしようとした。いつもは控えめな息遣いがいまはひどく艶かしく感じる。短くて熱い吐息が僕の肌を撫でるだけでどうにかなってしまいそうで(もう、なっている)潤う咥内を散々荒らしたあと、真っ白なうなじに唇を滑らせた。君は胸を締め付けるような声を漏らしながら、白い手で僕の着物に皺を作った。止まらない、止まれない。唇はどんどん彼女の核心へと落ちて行きたがる。

「千鶴…したい」
「っん、は…ぃ」

羞恥か快感か、目を潤ませる君は儚げに笑った。

「だから…反則だって、」

音を立てて崩れた理性は僕を放ち君を捕らえた。僕に閉じ込められた君は、その白く美しい肢体を僕に暴かれて、貫かれて、そうして、愛される。言葉ではどうしても言えないから、だから繋がった身体から君に伝えたい。止むことなく沸き上がる想いを。



僅かの間違いもなく
君に届け



2011.02.27


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