独占欲って言うより、私欲。だって彼女はぼくのものって言うより、もう僕だから。千切れたら痛いし、苦しいし、不安だし、だから僕から離れちゃいけないようになっている。なのに彼女は馬鹿だから、平気で僕から離れていこうとするんだ。だからもう離れられないように僕と繋がっちゃえばいいと思うんだよね。僕の一部、というか全部になっちゃえばいいと思うんだよね。もういっそ互いに分からなくなってしまえばいいと思うんだよね。そんな風に彼女に言うと、彼女は「嫌です」って即答した。あまりの速さに腹が立ったのは仕方ないよね。

「総司さんが分からなくなってしまうなんて嫌です、絶対嫌です。分かっていたいです、感じていたいです、ずっと。ずっと。いつか死が訪れたって感じていたいです」

息もしないであんまり必死に君が訴えるから僕は参ってしまった。参ってしまった。君が泣きながらそう言うから。あやすように君の髪を撫でると体を預けてきてそのまま抱き締めた。震えていた。それから、柔らかくてあたたかかった。ああ、馬鹿は僕だ。そう思った。君が分からなくなるっていうのは、感じられなくなるっていうのは、今感じるすべてを失くすということなんだ。こんなに実直に感じられる君を手放すことなんだ。これ以上の幸福なんて僕にはなかったのにね。抱き締めた体には僕の愛するすべてが詰まっている。僕のすべてが詰まっている。こんなことに気付けなかった自分を斬りたくなった。「ごめんね」と耳許で囁くと君は「好きです」って言った。だから心臓が潰れそうになって、思わず泣きそうになった。


愚かな僕のすべては君



2012.03.26


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