その白さが嫌だった。まるで彼女の心の中そのものを見ているようで。人ではないものに成り果てた汚らわしい俺には、彼女はとても純粋で綺麗で、触れたいなんて思いたくても思わせてくれない。なのに、彼女は当たり前に俺に触れるから、だからわからせてやろうと思った。俺とお前じゃ、もう何もかもが違っちゃったんだってこと。


「っう、・・・ひ、ぁ」
「なに?ちゃんと言えよ」
「あ、やめてっ・・・っく!」
「やめて?・・・冗談。こんなに感じてるくせに」
「・・・!」

千鶴は目を大きく見開いて涙を流した。絶望、失望。どちらとも取れるその表情は俺を興奮させる。繋がった下肢から襲ってくる快感は明らかに俺を狂わせていた。そして彼女も、言葉とは相反する身体の反応に気付いているはず。それでも嘘の言葉を並べるのは、きっと信じたくないからだ。

「へ、すけくっ・・・おねがい」
「無理、に決まってんじゃん」
「おねがい・・・っ」
「無理だって・・・、だって、こんなに、気持ちいい、し」

そう言って無意識に腰は揺れる。深く、激しく。俺の容赦ない律動に千鶴は切ない声をあげて懇願する。やめて、やめて。嬌声に混じるその願いはただの興奮材料へと変わっていく。

「んあ!あ、あっ、」
「っはあ、きも、ちっ」
「やぁっ!・・ぅん!」

いつだって欲しかった唇に、今はいとも簡単に囓りつける。柔らかくて湿った千鶴の唇は酷く甘美でいくらでも口づけられる。無理矢理に舌を絡めれば千鶴はひゅうっと息をあげて、苦しそうに咥内を掻き回されるだけだった。

「んん、んっ、はぅ・・・ん」
「ちづ、る」

淫らに揺れる腰、無意識に俺を締め付ける体内、涙を流しながら唇に答える唇。どれもが、なにもかもが、俺を満たす。同時に、もっと欲しいと願う。欲しがって奪って、満たして。その繰り返しをこの夜の内でもう何度したことか。だんだんと抵抗の声が消える千鶴は、色のない目で空を見つめていた。それが無性に、苛立たしい。

「俺を、見てよ」
「・・・あ、ん」
「千鶴、俺を、見て」

ゆるくゆるく腰を揺らしながらその瞳を覗き込む。決して俺を映さないその目に、情けない顔をした俺の顔が映った。泣きそうだ。馬鹿みたいだ。消えないやるせなさを全部熱と欲情に変えて彼女に打ち付ければ、また切ない声をあげるだけの彼女になる。

「っああ!、へ、すけく」
「千鶴、千鶴千鶴っ、」
「ん、も・・う」

きゅっ、と締まる。ふっ、と途切れる。気がつけば千鶴の中には俺の汚いもの全部が放たれていた。千鶴は疲れ果てたように目を閉じ、四肢の力を抜いた。否、抜けた。白い身体に覆い被さり、首筋に顔をうずめ、指を絡め。ぴったりと触れあって。嗚呼、このまま綺麗な千鶴の一部になってしまいたいと願った。叶わぬ願いは、熱い水になって頬を流れていった。



君の白になりたい



2011.01.28


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