ずっと君が欲しかったんだ。僕の口から漏れる言葉はただ、それだけ。

「だ、めッ…、んん!」
「欲しかったんだ、ワコ」

君の柔らかな胸を僕の舌が濡らしていく。壮絶に悩ましくて艶かしいその光景に、また体が熱くなった。もう何も身に纏わないお互いの肌が合わさって、吸い付いて、離れられない感覚が気持ち良くて堪らない。

「ワコ、ねえ僕、もうダメだ」
「タクトく、ん…お願い、だから。やめて…」
「ねえワコ」

熱い吐息を君の鎖骨に吐き出すと君は小さく跳ねた。ねえどうしてだろうね。君の体は、こんなにも僕を感じ取ってくれているのに。君の心は、こんなにも僕を拒絶する。どうしても交わらないふたつを無理矢理にでも結ぼうと僕の体は君をさまよう。君の核心を目指して、僕の熱が進んでいく。

「ッ、あ!やだァ!」
「欲しい、欲しかった、ワコ、君だけをずっと」

埋もれていく、愛と嘯きながら僕の熱が君に。締め付けるこの強さを愛と錯覚しながら。

「やぁぁッ!いや、いや、助けてぇ、スガタ、く…!」

なのにそんな甘い余韻を、君は一瞬で打ち砕いた。君が呼んだのは、僕から尽く君を奪っていった彼の名前。夜みたいに、君を包む彼の。

「なん、で。」
「ぅう、あ、スガ、タ…」
「なんで、アイツなの」

今君の一番近くにいるのは僕だろう?一番君を求めているのは僕だろう?一番君を好きなのは、僕だろう?なのになんで、なんで君は。君の心は。

「僕を求めてくれないの」
「タクト、くん…」

体は熱いのに、心は一気に冷めていった。埋もれた熱をこれでもかってくらい打ち付けて、吐き出して、汚して。君がもう、壊れればいいと思った。壊れて、わからなくなればいいと思った。

「や、うご、かな…で!」
「ワコ」

ほら、わかるだろ?
今から僕は、君を壊すって。

「君が欲しいだけなんだよ」

ワコ。
恋じゃなくていい愛じゃなくていい感情なんていらない。
ただ僕が君を手に入れる。
それだけのこと。

この行為に、決して甘いものなんて存在できないんだよ。




2011.09.19


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