ワコは切ない声で僕の名を呼んだ。琥珀色の目から溢れる涙、鼻にかかる甘い吐息。僕の首にその細い腕をまわして、ただ揺れる。僕によって揺れる。

「・・・は、」
「あ、・・・っ」
「堪えないで、聴かせて」

僕とは違った白さの肌をゆっくり手で撫でる。汗ばんだワコの肌と僕の手が、互いに愛おしそうに吸いつき合う。微かに震えながら声を殺すワコは、潤んだ目で僕を見上げ儚く笑った。

「スガタくんの声も・・・聴かせて」

白い手が僕の頬を掠め、喉元に当てられる。たどたどしいその手つきは妙に僕を興奮させて、彼女の身体を這う右手がぴくんとはねた。

「ワコ、ワコ」
「もっと、聴きたい」
「ワコ、好きだよ、僕のそばからはなれない、で」
「スガタくん、好きだよ、どこにも行かないよ、そばにいるよ、そばに、いて」

切なく、歌うように彼女は鳴く。揺れる。僕によって揺れる。指を絡めて握り合うこの手から、隙間なく合わさった唇から、僕らを繋ぐ下肢から、止めどないこの愛が君に流れるといいのに。僕に流れ込むといいのに。ふたりでひとりになって、絶対に離れないようにいつもお互いを感じられるように、融け合ってしまえたらいいのに。そんな愚かな夢をみながら、今日も僕らは刹那に融け合う。



どうして僕らはひとつの固体になれないのだろう。


2011.02.20


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