月のように静かな瞳に見つめられるたびに、私の心臓は激しく拍動を刻む。長い指が私の唇を掠めたかと思うと、途端に柔らかな唇がそれを塞ぐんだ。息が止まる瞬間、伏せられた彼の睫毛が少しだけ震えている。その瞬間が、私はどんな時間よりも好きだった。

「ん・・・」

私は上手なキスの仕方を知らないから、ただ彼にしがみつくことしかできない。そんな私を彼はやさしく抱きしめて髪を撫でて、唇をより一層強く押しつけてくる。反射的にきゅっと身体を強張らせる私を安心させるかのようにひたすらに髪を撫でくれる。

「ワコ、」

キスの合間に私の名を呼ぶその声はとても熱っぽい。私の鼓膜をじんわりと揺らして、泣きたくなるような感覚を残していく。涙腺は弱い方じゃないと思っていたけど、彼を前にするとそんなこと嘘だったと思う。目を細めて微笑む彼を見つめるけど、いつだってその顔はぼやけて見えるんだ。

「スガタ・・・くん」
「すき、だよ」
「っ・・・」
「すきだよ、ワコ」

愛を囁くその声は眼差しは、とてもとても寂しそうで私は切なくなる。さよならよりも悲しいその言葉を私は全身で聴く。そうして答える。

「すきだよ、スガタくん」
「・・・ワコ」
「あなたがすき、すき・・・すき」

馬鹿みたいに繰り返す私の言葉ごと呑み込むように、彼は熱いキスをくれる。噛み付くように啄むように、惜しむように欲しがるように。相変わらずしがみつくことしかできない私を強く抱きしめて離そうとはしない。その腕の強さが、唇の熱さが、たまらない幸せの海へと私を溺れさせていくの。


キスに溺死
呼吸は必要ないのです



2011.01.11


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