熱い吐息。吸うことよりも吐くことばかりを頑張っている気がする。体内に渦巻く熱をなんとか外に出してしまいたくて何度も何度も息を吐くけどなんの意味もなかった。吐いた息の倍以上にまた熱が籠もって、どうしようもなく熱くなっていく。

「・・・か、んだ」

私に熱を灯す犯人は、とても綺麗で。私の身体と瞳を揺らして同様に熱い吐息を漏らしていた。その吐息が肌を撫でるたびに、馬鹿正直に私の身体は反応する。

「・・・っ、ん」
「声、出せよ」
「だ、って」

そんなこと言われたって声を出すことにはやっぱり最初の頃から抵抗があった。自分の厭らしい声を聞いたらまた変に熱が籠もってしまう。心臓が焼けるのだ。だから必死に声を押し殺そうとして指を噛んだら、彼は眉間に皺を寄せてその手をシーツに縫いつける。そして指の代わりにその薄い唇で私の唇を塞いでくれる。

「んんっ、ん、ふ」
「・・・、」

少しだけ余裕のなさそうなその顔とか、息遣いとか、そういうところたまらなく好き。声にはできない言葉が脳を横切る。この焼けるように熱い行為の中で、私はいくつもの言葉を思っては声に出来ず掴み損なう。いつだってそれは愛しい彼へ渡されるはずのものなのに、私は何一つ彼に与えられない。いつだって彼が、私にくれるだけなのだ、やさしさも、強さも、ぬくもりも。そう考えれば私はいつも泣きそうになって、そうなると決まって彼は私を大きく揺さぶるのだ。

「っあ!、や、やぁ!」
「こんな時に余計なこと、考えてんじゃっ、ねえ」

そうして不機嫌そうに呟く。いつだって、私の不安や情けなさを消し去るように激しく揺さぶる。そうすれば私はもう何も、彼のこと以外何も考えられなくなるから。そんな異形のやさしさにまみれて、私はまた彼に融ける夢を見るんだ。


融解する霧
私を掠めるすべてのものを、あなたはいつも消し去ってゆく




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